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[S09-13] Migrating Earthquake Swarm Activity in the Okinawa Trough revealed by Matched Filter Method
沖縄トラフは琉球弧の北西に位置し、現在もリフト拡大が進行している活発な背弧海盆である。沖縄トラフではしばしば群発地震が発生する。群発地震は主に沖縄トラフの中軸沿いや海底火山・熱水噴出孔周辺で発生する。ほとんどの群発地震は数日以内に活動が収束するが、1週間以上、あるいは約1年間続くこともある。群発地震の活動の推移をより詳細に把握するためには、より多くの地震活動を捉える必要がある。しかし沖縄トラフで群発地震が発生した場合、一時的に検知能力が低下する。また、M4クラスの地震では、気象庁の速度マグニチュードと変位マグニチュードに大きなずれが生じる(Nakamura, 2022)。そこでMatched filter法 (Kato et al., 2014)を用いて群発地震発生時に震源が特定されていないイベントを検出した。またマグニチュードの問題を解決するため、本研究では速度マグニチュードを採用した。2002年から2022年にかけて、沖縄トラフのリフト軸周辺で発生した主要な群発地震について、気象庁のカタログにある地震データをテンプレートとして使用し、イベントを検出した。群発地震発生域の周辺にある複数の地震観測点で記録された水平動成分の連続波形に対し、テンプレート地震のS波と連続波形との相関を計算した。相関はS波読み取り時刻のプラスマイナス2.0秒間を用いた。波形にはBandpass filter 2.0 – 4.0 Hz を適用した。地震活動の移動が確認された場合は、Rivalta (2010)の式を用いて移動速度と期間を推定した。これはダイク貫入によって群発地震活動域が指数関数的に拡大することを説明するモデルである。解析の結果、気象庁カタログに記載されたイベントを含め、約2~3倍の地震が検出された。また、2002年石垣島北部、2013年与那国海近海、2014年奄美大島近海、2019年宮古島北部の群発地震で地震活動の移動が確認された。南部沖縄トラフの群発地震では、地震活動域が長さ10 km以上に広がるケースが多かったが、中部沖縄トラフの群発地震では、ほとんどの活動域が約10~15km以内に留まった。2013年と2020年の与那国群発地震は、与那国リフトの南にある高まり(Futagoyama field:24.867N, 123.308E)から活動が開始している。ここは熱水噴出孔が確認されており(InterRidge Vents Database Ver.3.4)、直下にはマグマ貫入の痕跡が確認されている(Nishizawa et al., 2019)。Futagoyama fieldの直下に熱源となるマグマだまりがあるとすると、そのマグマだまりからのダイク貫入によって、群発地震が繰り返し発生していると考えられる。中部沖縄トラフでは、群発地震活動域が10 km以内に収まっていることが多い。これよりも狭い範囲で地震活動が移動している可能性も考えられるが、震源決定の精度が不足しているため、詳細を把握することは難しい。南部沖縄トラフと比較して、中部沖縄トラフで活動範囲が狭い群発地震が多いことは、マグマ活動、特にその粘性の違いに起因している可能性がある(Shinjo and Kato, 2000)。