The 2024 SSJ Fall Meeting

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Room D

Regular session » S10. Active faults and historical earthquakes

[S10] PM-1

Tue. Oct 22, 2024 1:30 PM - 3:00 PM Room D (Medium-sized Conference room 201 (2F))

chairperson:Kentaro Hattori(Kansai University), Takeo Ishibe

2:15 PM - 2:30 PM

[S10-04] The 1861 Nishio, Central Japan, earthquake seems to be an event within the Philippine Sea slab

*Tomoya HARADA1, Akihito Nishiyama2, Takeo Ishibe3 (1. Nuclear Regulation Authority, 2. Nara National Research Institute for Cultural Properties, 3. Association for the Development of Earthquake Prediction)

万延二年二月十四日(1861年3月24日)の丑刻(午前1〜3時)と寅刻(午前3〜5時)に発生した2回の地震(以下,西尾地震)によって,現愛知県西尾市・豊橋市を中心に小被害が記録されている.西尾市では,『願書写扣』の記録「小屋之分者相潰、其外家々大破ニ相成候」から震度5弱〜5強,『下永良陣屋日記』の記録「御書院始所々戸障子不動」等から震度5弱の揺れが推定される.豊川市では,『西村次右衛門日記』の記録「宅之壁等所々少々ツヽ損し申候、御城内神社石灯籠等倒届有之」から震度4〜5弱の揺れが推定される.一方,西尾地震による揺れは,江戸における多数の「大/強地震」,「地震」の記録に加え,現岡山県岡山市,現香川県丸亀市,現群馬県太田市,現新潟県上越市でも「地震」と記録されている.宇佐美・他(2002)は,日記史料の有感記録の検討から,「大/強地震」は震度3〜4程度の揺れ,「地震」は震度2〜3程度の揺れに相当するとし,佐竹(2002),石辺・他(2021)は史料に概ね記録される揺れは震度2程度以上としている.したがって,西尾地震の有感域はかなり広範囲で,1945年三河地震(M6.8)のそれに匹敵する規模である.三河地震による被害(全壊家屋5,539戸,半壊家屋11,706戸)[宇佐美・他(2013)]を考えると,西尾地震が地殻内浅部の地震だったとすれば,西尾市・豊川市で記録された被害が小さすぎる,あるいは,西尾市・豊川市の小被害に比べて有感域が大きすぎるという問題がある.
 西尾地震の震源・規模については,これまで,西尾市において地震発生後約10日にわたってほぼ連日余震による揺れが記録されていることから,北緯34°,東経137°付近の地殻内浅部で発生したM6程度の地震だと考えられてきた[宇佐美・他(2013),松浦・中村(2020)].しかしながら,例えば,西尾地震の推定震源付近で発生した1945年1月14日の地震(三河地震の余震,深さ10 km,M5.9)の震度分布は,震源近傍の震度は不明であるが,震度2の範囲は兵庫県東部〜長野県中部にとどまっている.よって,これまで考えられてきた西尾地震の震源と規模では,同地震の広大な有感域の説明は困難だと考えられる.なお,都司(2004)は,独自に作成した有感域の半径とマグニチュードとの関係式から西尾地震の規模をM6.6と推定し,三河地震のひとまわり小さい地震としている.しかしながら,地殻内浅部でM6.6の地震が発生すれば,西尾市・豊橋市の被害は記録された程度にとどまらないことは明らかである.
 1997年3月16日に愛知県東部のフィリピン海スラブ内発生した地震(深さ39 km,M5.9)では,住宅一部損壊2戸,負傷者4目の小被害[宇佐美・他(2013)]であった一方で,震度2の範囲は鳥取県東部から東京都・埼玉県まで広がっている.また,この地震による余震活動は比較的活発で,地震発生後約2ヶ月間で約180個の余震が発生している[気象庁地震予知情報課(1997)].したがって,震源付近の小被害と広大な有感域の双方を説明する地震の候補として,1997年愛知県東部の地震のようなフィリピン海スラブ内の地震が考えられる.
 本研究では,1997年愛知県東部の地震付近のフィリピン海スラブ内に位置・規模を変えて仮定した断層モデルによる予測震度分布を森川・藤原(2023)の地震動予測式から計算し,西尾地震の震度分布との比較から最適な断層モデルを推定した.断層モデルの走向・傾斜・すべり角は,1997年愛知県東部の地震のメカニズム解の東傾斜の節面の値を仮定した.また,武村(1990)の式を用いて気象庁マグニチュードから地震モーメントを計算し,地震モーメントからSomerville et al.(1999)の関係式を用いて断層面積を計算した.西尾地震の震度分布については,「大/強地震」を震度3,「地震」を震度2とした.断層モデルの推定に当たって,まず,森川・藤原(2023)の地震動予測式による1945年三河地震,1945年1月14日の地震,1997年愛知県東部の地震の予測震度分布と,これらの地震の実際に観測された震度分布との比較を行った.その結果,予測震度分布は,観測震度分布をかなりの整合性で再現していることが確認された.暫定的な結果では,北緯34.85°,東経137.30°の深さ40 kmにMw6.0(M6.3)の地震を仮定した場合,西尾市・豊川市の震度と広大な有感域の双方が最も良く再現できた.また,西尾地震のこれまで考えられてきた震源付近(地殻内浅部)に断層モデル(Mw5.8)を仮定した場合,震央付近では比較的広く震度6弱となる一方,震度2以上の範囲は兵庫県東部〜長野県中部にとどまることが確認された.