3:30 PM - 3:45 PM
[S10-08] An Attempt to Determine Seismic Intensity of Historical Earthquakes Using Interactive Generative AI
歴史地震の震度は古記録の被害記述などをもとに,震度判定表を用いて求められる.震度判定表の代表的なものに宇佐美(1994)がある.これは江戸時代に適用することを目的に作られた試案であり,改められるべきとされているが,現在に至るまで慣例的に使用されている.この震度判定表は,人体感覚,寺社,家屋の被害率など,指標ごとに被害程度で分けられている.震度を判定する場合は,地点や被害ごとに古記録と震度判定表を照らし合わせる作業を判定者が行う.そのため1)多地点の震度判定には時間と労力を要する,2)判定者の解釈や先入観が判定結果に影響を与える,といった問題が生じる.
そこで本研究では,LLM(大規模言語モデル)を用いた対話型生成AIにより,震度判定を行うことを試みた.震度判定表の内容を指標ごとに「92.土蔵は倒れるものもある→6」の形式で約400件を箇条書きに変換し,震度判定の基準とした.この基準をもとに古記録から震度判定を行うプロンプトを作成し,いくつかの対話型生成AIで出力結果を比較した.その結果,「屋形」を大名屋敷と認識するなど,古記録の記述を比較的よく理解することが可能な,「Claude 3.5 Sonnet」を用いることとした.判定結果の検証を可能にするために,震度判定結果とともに,使用した基準,判定の根拠,を出力させることとした.使用すべき指標を適用しないなどの問題が生じたために,適用可能な指標を選択させた上で,適合する基準を選択させるといった手順の改善を施した.また判定結果の信頼度の出力,判定する上での古記録の問題点(曖昧さなど)を指摘するプロンプトも試みた.
結果として,トライアルとして入力した地震被害の古記録に対し,多少の揺らぎは見られるものの,妥当な基準を適用して震度を判定することが可能となった.例えば「根津権現社別條無し惣門中にあるもの瓦のみ落って恙なし.境内辨才天の社のみ潰したり.」という古記録に対しては,「家屋・建具」の「瓦はずれることが多く,落ちるものもある→5弱」および,「寺院・神社の建物」の「拝殿が皆潰・潰→6(辨才天の社を拝殿と同等と見なす)」,判定結果5弱〜6,との出力が得られ,複数の指標を適用することも可能になっている.これに対し,弁財天社は主要な建物ではないことを補足すると,使用した基準が「寺院もしくは神社のその他の建物が皆潰・潰→5(辨才天の社を小規模な付属建物と見なす)」に変更され,判定結果が5弱に修正されるなど,対話形式による判定精度の向上が可能である.また「原田村家数百のうち本潰五,半潰二十」という例文に対しては,被害率を算出して「被害率=(潰家屋数+0.5×半潰家屋数)/総家屋数(%)が1.5~15%→5~6」を適用することも可能であった.またプロンプトを変更することにより,箇条書きにした複数の古記録に対して震度判定を行い,震度と使用した基準とともに表形式で出力することも可能である.
現状では出力結果に安定性を欠く部分がみられるため,プロンプトの改善などのさらなる試行錯誤が必要である. 古記録には曖昧さや人間による解釈を必要とする部分があることから,対話形式で震度判定を補助する機能として活用することを目指す.最終的には,東京大学地震火山史料連携研究機構(2021)「地震史料集テキストデータベース」などとの連携を考えている.
そこで本研究では,LLM(大規模言語モデル)を用いた対話型生成AIにより,震度判定を行うことを試みた.震度判定表の内容を指標ごとに「92.土蔵は倒れるものもある→6」の形式で約400件を箇条書きに変換し,震度判定の基準とした.この基準をもとに古記録から震度判定を行うプロンプトを作成し,いくつかの対話型生成AIで出力結果を比較した.その結果,「屋形」を大名屋敷と認識するなど,古記録の記述を比較的よく理解することが可能な,「Claude 3.5 Sonnet」を用いることとした.判定結果の検証を可能にするために,震度判定結果とともに,使用した基準,判定の根拠,を出力させることとした.使用すべき指標を適用しないなどの問題が生じたために,適用可能な指標を選択させた上で,適合する基準を選択させるといった手順の改善を施した.また判定結果の信頼度の出力,判定する上での古記録の問題点(曖昧さなど)を指摘するプロンプトも試みた.
結果として,トライアルとして入力した地震被害の古記録に対し,多少の揺らぎは見られるものの,妥当な基準を適用して震度を判定することが可能となった.例えば「根津権現社別條無し惣門中にあるもの瓦のみ落って恙なし.境内辨才天の社のみ潰したり.」という古記録に対しては,「家屋・建具」の「瓦はずれることが多く,落ちるものもある→5弱」および,「寺院・神社の建物」の「拝殿が皆潰・潰→6(辨才天の社を拝殿と同等と見なす)」,判定結果5弱〜6,との出力が得られ,複数の指標を適用することも可能になっている.これに対し,弁財天社は主要な建物ではないことを補足すると,使用した基準が「寺院もしくは神社のその他の建物が皆潰・潰→5(辨才天の社を小規模な付属建物と見なす)」に変更され,判定結果が5弱に修正されるなど,対話形式による判定精度の向上が可能である.また「原田村家数百のうち本潰五,半潰二十」という例文に対しては,被害率を算出して「被害率=(潰家屋数+0.5×半潰家屋数)/総家屋数(%)が1.5~15%→5~6」を適用することも可能であった.またプロンプトを変更することにより,箇条書きにした複数の古記録に対して震度判定を行い,震度と使用した基準とともに表形式で出力することも可能である.
現状では出力結果に安定性を欠く部分がみられるため,プロンプトの改善などのさらなる試行錯誤が必要である. 古記録には曖昧さや人間による解釈を必要とする部分があることから,対話形式で震度判定を補助する機能として活用することを目指す.最終的には,東京大学地震火山史料連携研究機構(2021)「地震史料集テキストデータベース」などとの連携を考えている.