4:00 PM - 4:15 PM
[S10-10] UHR MCS Survey at southwestern extension of Futagawa Fault Zone(Uto-hanto-hokugan section) Kyusyu, southwestern Japan.
布田川断層帯は，熊本県阿蘇郡南阿蘇村から，上益城郡益城町木山付近および宇土半島の北岸を経て，大矢野島の北西端の沖合に至る，概ね東北東―西北西方向に延びる全長64 km以上の活断層帯である（地震調査研究推進本部地震調査委員会，2013）．布田川断層帯は，布田川区間，宇土区間，宇土半島北岸区間に区分されており，このうち宇土半島北岸区間は島原湾南部の海域に推定されている．宇土半島北岸区間は，主として重力異常の急変帯の分布などから推定されているが，断層の位置形状・南西端の位置，過去の活動に関する資料がほとんど得られていない．産総研では，文部科学省委託事業「活断層評価の高度化・効率化のための調査手法の検証」の一環として，宇土半島北岸区間における海底活断層調査を2022年度から3ヶ年の計画で実施している．2022年度には，主として宇土半島北岸区間が推定されている領域を対象とした高分解能マルチチャンネル反射法音波探査（以下，「高分解能MCS探査」）を行い，断層の詳細な位置・形状を明らかにした（文科省・産総研，2023；大上・他，2023）．2023年度には断層帯の南西端の位置を明らかにする目的で，宇土半島北岸区間の南西延長部を対象とした高分解能MCS探査を行った．
高分解能MCS探査のための現地調査は2023年11月4日から2023年11月9日までの期間に実施した．2022年度の高分解能MCS探査の結果を踏まえて，宇土半島北岸区間を構成する海底活断層の島原半島側への延長部を対象として，断層を横断する方向に探査測線を配置した．最も南西側に配置した測線は，調査の安全性が担保できる範囲で，可能な限り島原半島の近くに配置した．高分解能MCS探査では，音源には出力2000Jのスパーカーを使用し，受振装置にはチャンネル間隔2.5 m，チャンネル数72 chのデジタルストリーマーケーブルを使用した．音源および受振点の座標を精密に決定するため，音源装置およびテールブイにそれぞれGNSS装置を設置した．また，ストリーマーケーブルのたるみ補正を実施するため，ケーブルの9カ所に小型深度ロガーを装着して水深変化を記録した．高分解能MCS探査で得られた観測データについて，各種ノイズ抑制処理・速度解析・マイグレーション処理・重合処理を行い，マイグレーション断面を作成した．
2022年度および2023年度の高分解能MCS探査で得られたマイグレーション断面によれば，宇土半島北岸区間を構成する海底活断層は第四紀の堆積体を累積的に上下変位させており，断層近傍の地層を引きずり上げる，または引きずり下げるように変形させている．さらに，湯島の北西に形成された海釜の南縁に確認できる海底活断層では海底面の変形が認められる．宇土半島北岸区間を構成する海底活断層は，宇土半島および大矢野島の北岸の海域を北東ー南西方向に発達し，大矢野島の北西沖から湯島の北側の海域を通過し，湯島の約6.0 km西北西の海域（島原半島の約1.3 km東側の海域）に延びることが確認できる．海底活断層の陸域延長部（島原半島）においては，多くの資料では陸域活断層が記載されていない．よって，断層帯の西側端点の位置は，高分解能MCSで海底活断層が確認できた地点と島原半島の海岸線の中間（湯島の約6.5 km西北西の海域，島原半島の約0.6 km沖合）に推定される．
参考文献: 地震調査研究推進本部地震調査委員会（2013）：「布田川断層帯・日奈久断層帯の評価（一部改定）」．文科省・産総研（2023）：「活断層評価の高度化・効率化のための調査手法の検証」令和４年度 成果報告書．大上・他（2023）：布田川断層帯宇土半島北岸区間における高分解能マルチチャンネル反射法音波探査，日本地震学会2023年度秋季大会．
高分解能MCS探査のための現地調査は2023年11月4日から2023年11月9日までの期間に実施した．2022年度の高分解能MCS探査の結果を踏まえて，宇土半島北岸区間を構成する海底活断層の島原半島側への延長部を対象として，断層を横断する方向に探査測線を配置した．最も南西側に配置した測線は，調査の安全性が担保できる範囲で，可能な限り島原半島の近くに配置した．高分解能MCS探査では，音源には出力2000Jのスパーカーを使用し，受振装置にはチャンネル間隔2.5 m，チャンネル数72 chのデジタルストリーマーケーブルを使用した．音源および受振点の座標を精密に決定するため，音源装置およびテールブイにそれぞれGNSS装置を設置した．また，ストリーマーケーブルのたるみ補正を実施するため，ケーブルの9カ所に小型深度ロガーを装着して水深変化を記録した．高分解能MCS探査で得られた観測データについて，各種ノイズ抑制処理・速度解析・マイグレーション処理・重合処理を行い，マイグレーション断面を作成した．
2022年度および2023年度の高分解能MCS探査で得られたマイグレーション断面によれば，宇土半島北岸区間を構成する海底活断層は第四紀の堆積体を累積的に上下変位させており，断層近傍の地層を引きずり上げる，または引きずり下げるように変形させている．さらに，湯島の北西に形成された海釜の南縁に確認できる海底活断層では海底面の変形が認められる．宇土半島北岸区間を構成する海底活断層は，宇土半島および大矢野島の北岸の海域を北東ー南西方向に発達し，大矢野島の北西沖から湯島の北側の海域を通過し，湯島の約6.0 km西北西の海域（島原半島の約1.3 km東側の海域）に延びることが確認できる．海底活断層の陸域延長部（島原半島）においては，多くの資料では陸域活断層が記載されていない．よって，断層帯の西側端点の位置は，高分解能MCSで海底活断層が確認できた地点と島原半島の海岸線の中間（湯島の約6.5 km西北西の海域，島原半島の約0.6 km沖合）に推定される．
参考文献: 地震調査研究推進本部地震調査委員会（2013）：「布田川断層帯・日奈久断層帯の評価（一部改定）」．文科省・産総研（2023）：「活断層評価の高度化・効率化のための調査手法の検証」令和４年度 成果報告書．大上・他（2023）：布田川断層帯宇土半島北岸区間における高分解能マルチチャンネル反射法音波探査，日本地震学会2023年度秋季大会．