[S11P-01] Search for microbaroms sources by a tripartite observation using newly developed microbarographs
1.序
これまで、周期10~20秒の海洋波浪の非線形衝突により大気側に発生する半分周期の圧縮波が大気脈動であり、海側に発生する圧縮波(水中音波)が海底で地震波に変換されたものが脈動であると説明されてきた。しかし、これらが1つの地球振動システムとして働くことを示した観測例はない。特に大気脈動は波長が短く(~2km)且つ波形相関の良い時間が長く続かないため波源推定すら難しい。本研究は、この現象のより深い理解を目指して新型微気圧計を用いて開始した3点アレー観測の概要を報告するものである。
2.3点アレー(トリパタイト)と観測システム
Fig.1Aに、厚木市に展開した3点アレー(A1,A2,A3)の配置を示す(Google地図利用)。観測点間の距離を大気脈動1波長(約2km)強に取ることにより、波形相関に伴う困難を最小限に抑えた。Fig.1Bに観測システムの概要を示す。1観測点あたりのシステムは大気脈動が検出可能なノイズレベル10mPa程度の新型微気圧センサーと時刻同期用のGPS受信機、システムを制御するRaspberry Pi5はLinux OSとPythonで組まれたソフトで構成されている。気圧変化は20Hzでサンプリングされ、タイムサタンプ付き分解能0.1mPaの微気圧データとしてRaspberry Pi5にUSB接続されたSSDに記録される。現時点ではSSDは現地回収されている。観測が開始されて以来アブストラクト時点で3カ月が経過した。
3. データ解析Fig.2に2024-06-19の19‒20時(UT)のPSD図を示す。3点(A1,A2,A3)ともスペクトル形状は細部まで殆ど変わらず、共通して周波数0.2Hz付近に顕著な大気脈動ピークを示す。Fig.3には、同日同時刻帯記録に0.2Hzを中心とするバンドパスフィルターを通した記録から5分間分を抜き出したものである。各観測点には、似たような振幅の波群が繰り返し到着するが、その到着時刻には多少のズレがあり、波群は先ずA1に到達し、次に互いに同程度の遅れでA2とA3に到達する。到来した波群を平面波で近似すると波群の水平伝播速度は約340m/sとなり大気音速にほぼ一致する。即ち観測された周期5秒の波群はターゲットである大気脈動であると同定される。2024-06-19の19‒20時の時間帯全体についてより系統的な相関解析(Nishida et al., 2005,GJI)を行った結果をFig.4に示す。この図はアレーに入射してきた平面波のSlowness vector (位相速度ベクトルの逆数)の東西成分を横軸に、南北成分を縦軸にプロットしたものである。図は、周期5秒の波が1時間もの間、音波速度よりわずかに早い353m/sの水平速度で常に同じ方向から(北から時計回りに62度)入射し続けていたことを示す。Fig.5は、この大気脈動がどこから到来したものかを探ったものである。即ち、同じ日の気象庁発表の波浪高度分布図上を使って、大気脈動の入射方向を大円コースに沿って逆にたどってみた。波浪分布図によると、房総はるか沖に線状に連なる波浪高度の高い峰が存在するが、その走行は大気脈動の入射方向と並行し交差しない。波浪高度と大気脈動との関係を議論するには後者のデータが決定的に不足している。
4.謝辞
厚木市に展開した微気圧計アレー観測にあたっては、以下の機関・関係者の方々のお世話になっています。記して感謝します。
A1観測点:株式会社ミトミ技研、A2観測点:自修館中等教育学校、A3観測点:関泉寺
これまで、周期10~20秒の海洋波浪の非線形衝突により大気側に発生する半分周期の圧縮波が大気脈動であり、海側に発生する圧縮波(水中音波)が海底で地震波に変換されたものが脈動であると説明されてきた。しかし、これらが1つの地球振動システムとして働くことを示した観測例はない。特に大気脈動は波長が短く(~2km)且つ波形相関の良い時間が長く続かないため波源推定すら難しい。本研究は、この現象のより深い理解を目指して新型微気圧計を用いて開始した3点アレー観測の概要を報告するものである。
2.3点アレー(トリパタイト)と観測システム
Fig.1Aに、厚木市に展開した3点アレー(A1,A2,A3)の配置を示す(Google地図利用)。観測点間の距離を大気脈動1波長(約2km)強に取ることにより、波形相関に伴う困難を最小限に抑えた。Fig.1Bに観測システムの概要を示す。1観測点あたりのシステムは大気脈動が検出可能なノイズレベル10mPa程度の新型微気圧センサーと時刻同期用のGPS受信機、システムを制御するRaspberry Pi5はLinux OSとPythonで組まれたソフトで構成されている。気圧変化は20Hzでサンプリングされ、タイムサタンプ付き分解能0.1mPaの微気圧データとしてRaspberry Pi5にUSB接続されたSSDに記録される。現時点ではSSDは現地回収されている。観測が開始されて以来アブストラクト時点で3カ月が経過した。
3. データ解析Fig.2に2024-06-19の19‒20時(UT)のPSD図を示す。3点(A1,A2,A3)ともスペクトル形状は細部まで殆ど変わらず、共通して周波数0.2Hz付近に顕著な大気脈動ピークを示す。Fig.3には、同日同時刻帯記録に0.2Hzを中心とするバンドパスフィルターを通した記録から5分間分を抜き出したものである。各観測点には、似たような振幅の波群が繰り返し到着するが、その到着時刻には多少のズレがあり、波群は先ずA1に到達し、次に互いに同程度の遅れでA2とA3に到達する。到来した波群を平面波で近似すると波群の水平伝播速度は約340m/sとなり大気音速にほぼ一致する。即ち観測された周期5秒の波群はターゲットである大気脈動であると同定される。2024-06-19の19‒20時の時間帯全体についてより系統的な相関解析(Nishida et al., 2005,GJI)を行った結果をFig.4に示す。この図はアレーに入射してきた平面波のSlowness vector (位相速度ベクトルの逆数)の東西成分を横軸に、南北成分を縦軸にプロットしたものである。図は、周期5秒の波が1時間もの間、音波速度よりわずかに早い353m/sの水平速度で常に同じ方向から(北から時計回りに62度)入射し続けていたことを示す。Fig.5は、この大気脈動がどこから到来したものかを探ったものである。即ち、同じ日の気象庁発表の波浪高度分布図上を使って、大気脈動の入射方向を大円コースに沿って逆にたどってみた。波浪分布図によると、房総はるか沖に線状に連なる波浪高度の高い峰が存在するが、その走行は大気脈動の入射方向と並行し交差しない。波浪高度と大気脈動との関係を議論するには後者のデータが決定的に不足している。
4.謝辞
厚木市に展開した微気圧計アレー観測にあたっては、以下の機関・関係者の方々のお世話になっています。記して感謝します。
A1観測点:株式会社ミトミ技研、A2観測点:自修館中等教育学校、A3観測点:関泉寺