[S15P-18] Comparison of seismic wave characteristics and the effect of each floor of the building number on vibration
1.はじめに
2011年の東日本大震災では,震源から遠く離れた大阪市の高層ビル上層階で大きな揺れが起きた.既存研究には,地震動の継続時間がRC橋脚の耐震挙動に及ぼす影響1)がある.しかし,地震対策に向けて,地震特性に応じた構造物への影響を比較する研究は無かった.本研究では,せん断多質点系モデルを用い多質点系の弾塑性地震応答解を行い,5階建ての建築物の層間変位と層せん断力を比較することで,地震の種類の違いと構造物への影響について検討した.
2.解析ツールの概要
解析ツールについて説明する.Excel(振動解析編)2)は,地震応答解析に係る数値解析ツールである.本研究では,海溝型地震と直下型地震の,構造物への影響の比較できるかを検討した上で,Excel(振動解析編)2)を活用し,K-netやKiK-netで観測した地震波の波形を用いて,地震応答解析のデータを行った.
地震応答解析の運動方程式を示す.
[運動方程式]
M × x'' + C × x' + K × x = -M × y''
ここで,Mは質量,Cは減衰係数,Kはばね定数,yは地盤の変位,xは質点の変位である.
3.地震応答解析とスペクトル解析の条件
東日本大震災と能登半島地震について,地震応答解析およびスペクトル解析の条件について表-1に示す.
東日本大震災,能登半島地震の地震波の最大加速度の比較を図-1,図-2に示す.
東日本大震災の時にK-netで栗原市築館(MYG004)のNSで観測された最大加速度が1254.38galで,能登地震の時にK-netで志賀町(ISK006)のEWで観測された最大加速度が1692.51galであった.
栗原市築館(MYG004)における3方向の中でNSが最大で,h=0.05で最大加速度が1.29×104cm/s2(固有周期より0.24s後)であった(図-3).
志賀町(ISK006)における3方向の中でEWが最大で,h=0.05で最大加速度が1.14×104cm/s2(固有周期より0.21s後)であった(図-4).
4.多質点系の弾塑性地震応答解析の条件
対象となる建築物の条件を示す.建物の高さ16.0m,各層の剛性k1=5.10×103kN/cm,k2=5.92×103kN/cm,k3=4.96×103kN/cm,k4=3.73×103kN/cm,k5=2.24×103kN/cm,各層の質量m1=5.61×102t,m2=5.10×102t,m3=5.10×102t,m4=5.10×102t,m5=5.10×102tとする.せん断多質点系モデルを図-5に示す.
東日本大震災における多質点系の弾塑性地震応答解析について,1F~5Fの層間変位と層せん断力の比較を図-6,図-7に示す.東日本大震災の1Fの場合の層間変位が最大で3.75cm,層せん断力が最大で1.91×104kN,5Fの場合の層間変位が最大で4.86cm,層せん断力が最大で1.09×104kNであった(表-2).
結果,層間変位と層せん断力が3Fで最も小さいことが分かった.
能登半島地震の1F~5Fの層間変位と層せん断力の比較を図-8,図-9に示す.能登半島地震の1Fの場合の層間変位が最大で2.80cm,層せん断力が最大で1.43×104kN,5Fの場合の層間変位が最大で3.57cm,層せん断力が最大で8.00×103kNであった(表-3).
結果,層間変位で最も大きいのは5Fであった.
5.まとめと今後の展望
今後,海溝型地震と直下型地震の地震波の比較について関連研究を継続して調査する.
本研究で用いたツール2)を使い,能登地震の2023年と2024年の揺れの比較や,地震応答解析のスペクトル解析の比較を行う.
さらに地震応答解析の多質点系について建物層数を3F~7Fに変化させたシミュレーションを行い,結果について比較し考察する予定である.
6.謝辞
本論文の作成にあたり,お世話になった方々にこの場をかりて御礼申し上げます.
指導教員である東京都市大学大学院総合理工学研究科建築・都市専攻の白旗弘実先生には,数値解析の手法やグラフ・図表の作り方等において,きめ細やかなご指導を頂き,研究を進めていくことができたことに感謝申し上げます.
参考文献
1) 岩本政巳・正木智弘・杉戸真太:地震動の継続時間がRC橋脚の耐震挙動に及ぼす影響,コンクリート工学年次論文集,36,No.2,pp.595-600,2014.
2)藤井大地・松本慎也:Excelで解く構造力学 振動解析編,2023
2011年の東日本大震災では,震源から遠く離れた大阪市の高層ビル上層階で大きな揺れが起きた.既存研究には,地震動の継続時間がRC橋脚の耐震挙動に及ぼす影響1)がある.しかし,地震対策に向けて,地震特性に応じた構造物への影響を比較する研究は無かった.本研究では,せん断多質点系モデルを用い多質点系の弾塑性地震応答解を行い,5階建ての建築物の層間変位と層せん断力を比較することで,地震の種類の違いと構造物への影響について検討した.
2.解析ツールの概要
解析ツールについて説明する.Excel(振動解析編)2)は,地震応答解析に係る数値解析ツールである.本研究では,海溝型地震と直下型地震の,構造物への影響の比較できるかを検討した上で,Excel(振動解析編)2)を活用し,K-netやKiK-netで観測した地震波の波形を用いて,地震応答解析のデータを行った.
地震応答解析の運動方程式を示す.
[運動方程式]
M × x'' + C × x' + K × x = -M × y''
ここで,Mは質量,Cは減衰係数,Kはばね定数,yは地盤の変位,xは質点の変位である.
3.地震応答解析とスペクトル解析の条件
東日本大震災と能登半島地震について,地震応答解析およびスペクトル解析の条件について表-1に示す.
東日本大震災,能登半島地震の地震波の最大加速度の比較を図-1,図-2に示す.
東日本大震災の時にK-netで栗原市築館(MYG004)のNSで観測された最大加速度が1254.38galで,能登地震の時にK-netで志賀町(ISK006)のEWで観測された最大加速度が1692.51galであった.
栗原市築館(MYG004)における3方向の中でNSが最大で,h=0.05で最大加速度が1.29×104cm/s2(固有周期より0.24s後)であった(図-3).
志賀町(ISK006)における3方向の中でEWが最大で,h=0.05で最大加速度が1.14×104cm/s2(固有周期より0.21s後)であった(図-4).
4.多質点系の弾塑性地震応答解析の条件
対象となる建築物の条件を示す.建物の高さ16.0m,各層の剛性k1=5.10×103kN/cm,k2=5.92×103kN/cm,k3=4.96×103kN/cm,k4=3.73×103kN/cm,k5=2.24×103kN/cm,各層の質量m1=5.61×102t,m2=5.10×102t,m3=5.10×102t,m4=5.10×102t,m5=5.10×102tとする.せん断多質点系モデルを図-5に示す.
東日本大震災における多質点系の弾塑性地震応答解析について,1F~5Fの層間変位と層せん断力の比較を図-6,図-7に示す.東日本大震災の1Fの場合の層間変位が最大で3.75cm,層せん断力が最大で1.91×104kN,5Fの場合の層間変位が最大で4.86cm,層せん断力が最大で1.09×104kNであった(表-2).
結果,層間変位と層せん断力が3Fで最も小さいことが分かった.
能登半島地震の1F~5Fの層間変位と層せん断力の比較を図-8,図-9に示す.能登半島地震の1Fの場合の層間変位が最大で2.80cm,層せん断力が最大で1.43×104kN,5Fの場合の層間変位が最大で3.57cm,層せん断力が最大で8.00×103kNであった(表-3).
結果,層間変位で最も大きいのは5Fであった.
5.まとめと今後の展望
今後,海溝型地震と直下型地震の地震波の比較について関連研究を継続して調査する.
本研究で用いたツール2)を使い,能登地震の2023年と2024年の揺れの比較や,地震応答解析のスペクトル解析の比較を行う.
さらに地震応答解析の多質点系について建物層数を3F~7Fに変化させたシミュレーションを行い,結果について比較し考察する予定である.
6.謝辞
本論文の作成にあたり,お世話になった方々にこの場をかりて御礼申し上げます.
指導教員である東京都市大学大学院総合理工学研究科建築・都市専攻の白旗弘実先生には,数値解析の手法やグラフ・図表の作り方等において,きめ細やかなご指導を頂き,研究を進めていくことができたことに感謝申し上げます.
参考文献
1) 岩本政巳・正木智弘・杉戸真太:地震動の継続時間がRC橋脚の耐震挙動に及ぼす影響,コンクリート工学年次論文集,36,No.2,pp.595-600,2014.
2)藤井大地・松本慎也:Excelで解く構造力学 振動解析編,2023