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[S16-01] 庄内平野での常時微動の単点観測とアレイ観測から推定される地盤構造
1894年庄内地震は庄内平野東縁断層帯北部を震源とした内陸型地震だと推定されている(地震本部,2009)。水田・鏡味(2013)は、地震被害に関する史料を調査して求めた住家全潰率に基づき、大字ごとに観測された震度を推定した。これによると震度7の地域は断層帯周辺のみならず、庄内平野北部全域で広く散在したことが分かった。一方、石瀬・他(2024)では、史料の詳細な分析にから被害が全て震害によるものではなく、液状化などの地盤変状に起因したものがある可能性を見出している。そこで本研究は、震害による被害の分布と地震動及び地震動に大きな影響を与える地下構造の関係を明らかにすることを目的に、庄内平野で微動のアレイ観測及び単点観測を行い、その観測記録に基づいて庄内平野の地盤構造を推定することを目標としている。アレイ観測は計9地点で行ったが、その内3地点は背斜構造(久保,1991)が見られる余目周辺で行った。アレイの形状は原則、一辺が45m、15m、5m、2mである正三角形とした(アレイ1のみ別形状)。単点観測は主として東西方向に7測線の計84地点で行い、間隔が狭い所では1km間隔、広い所では2km間隔で観測点を配置した。さらに測線間を補完するように測線外に10か所以上の観測点を設けた。また、観測には主に加速度地震計SMAR-6A3PとJU410を用いた。サンプリング周波数は200Hzとし、単点観測では30分以上、アレイ観測では大きさに応じて10分から2時間の計測を行った。単点微動観測記録からは各地点でのH/Vスペクトル比を算出した。まず、得られた加速度時刻歴データを1秒ずつずらしながら40.96秒の小区間に区切り出し、NS・EW・UDの3成分の振幅二乗和が小さい15区間を50%以上の重複がないように抽出した。区間の前後1秒にコサインテーパーによる処理を施し、高速フーリエ変換を用いて各区間のフーリエスペクトルを求めた。さらにバンド幅0.1HzのParzenウィンドウを用いて平滑化した後にH/Vスペクトル比を求め、15区間の幾何平均をとった。微動アレイ観測記録からは微動アレイ解析ツールBIDO(ver.3.2)(Cho et al., 2006,Cho et al., 2008)を用いてSPAC法によりRayleigh波の位相速度を求めた。解析パラメータは、セグメント平均の際のセグメント長、セグメントはそれぞれ10.24秒、10個であり、Parzenウィンドウのバンド幅は0.3Hzとした。位相速度は大凡安定した結果が得られた。H/Vスペクトル比については盆地構造に起因する方位依存性や卓越周期の変化を期待したが、空間的傾向を明確には確認できなかった。アレイ観測を行った場所については今回得られたRayleigh波位相速度をもとに、J-SHISを初期モデルとして層厚をパラメータとしたインバージョンにより地盤構造を推定する。H/Vスペクトル比については今後再観測を行い、今回の単点観測から得られた解析結果の妥当性について改めて確認する。謝辞:庄内平野での微動観測の実施にあたり、山形大学の石瀬素子講師、東京大学地震研究所の加納靖之准教授、大邑潤三助教、産業技術総合研究所の吾妻崇主任研究員、京都大学防災研究所の松島・長嶋研究室の学生(周宇廷、Thinzar Yadanar、五熊大)の協力を得た。また、本研究は東大地震研-京大防災研拠点間連携共同研究一般課題型研究の助成を受けた。記して深謝の意を表す。