[S16P-04] Estimation of Subsurface Structure for Prediction of Strong Ground Motions in Landslide Areas in Taki Town, Shimane Prefecture, Japan
1.はじめに
地震による地すべり被害を事前予測するために,地すべり地域の地盤構造を推定し,地震動を予測することは重要である.本研究では,島根県多伎町の地すべり地域で微動観測(d北村・他,2024)および重力観測(錦織・他,2024)の結果を総合的に評価し,地盤構造の推定を行った.
2.観測および解析
微動観測は,防災科学技術研究所(2006)による地すべり地形区分に判別された小田地区及び田儀地区について,単点3成分観測を道路沿いに91点で実施した.また,直線上に設置した直線アレイ観測を34地点,直線アレイを組み合わせたL字アレイ観測を6地点で実施した.地震計はJU410(白山工業)を用い,サンプリング周波数は200Hzとし,観測時間は各地点で10~15分間としている.単点3成分記録については,水平動2成分に対する上下動のスペクトル比(H/V)を求め,卓越周期,ピーク値,形状などの特徴をまとめ分布図作成し,地すべり地域内の地盤構造の変化を調べた.また,直線及びL字アレイ観測では,SPAC法(Aki,1957)もしくはCCA法(Cho et al.,2006)を用いて位相速度分散曲線を求めその変化も調べた.また,L字アレイ地点においては,位相速度分散曲線とアレイ中心のH/Vを用いて,フォワードモデリングにより地盤構造を推定した.重力観測はラコスト・ロンバーグ重力計(G1034)を用いた.また,位置の測量にはGNSS測量機(Trimble R2)を用いて10cm以内の精度で決定されている.測定データは各種補正を施し重力異常を求めた.基盤の仮定密度を2.4g/cm^3として重力異常を求め,2次元および3次元解析により均質2層の密度構造を推定した.密度構造では表層と基盤の密度差を0.4g/cm^3とし,2次元解析では断面の両端で基盤が露頭するように拘束条件を与えた.また,3次元解析では1000mの上方接続フィルターにより長波長成分を取り除き,2次元解析と同じ基盤露頭点2か所に拘束条件を与えた.
3.地盤構造
微動観測の解析結果より,地すべり地域の崖錐堆積物のS波速度は150~400m/sであり,基盤岩まで層厚は10~20m程度であることが分かった.また,H/Vの特徴として,長周期側(1~2秒)と短周期側(0.1~0.4秒)にピークがみられる.短周期側の卓越周期は崖錐堆積物の層厚に対応しており,地すべり移動体で厚くなる傾向がみられるが,滑落崖のすぐ近くで周期が長くなる箇所もみられた.また,長周期側の卓越周期は地震基盤までの層厚に対応している可能性があり,今後大規模な微動アレイ観測や多伎町役場の地震記録を用いた解析により深部構造より精度良く推定する予定である.重力観測の解析結果より,地すべり地域内に低重力異常の領域が局所的にみられた.2次元解析による密度構造断面では表層の層厚が最大で400m程度になることがわかった.また,3次元解析による基盤面の分布より,小田地区では,地すべり移動体内で基盤の起伏が激しく,複数数の移動体のブロックが存在することが関係していると思われる.また,田儀地区では一つの移動体のブロックの全体で基盤が深くなることがわかった.このことより,地すべり地形内でも基盤の深さが局所的に変化していることがわかった.
地震による地すべり被害を事前予測するために,地すべり地域の地盤構造を推定し,地震動を予測することは重要である.本研究では,島根県多伎町の地すべり地域で微動観測(d北村・他,2024)および重力観測(錦織・他,2024)の結果を総合的に評価し,地盤構造の推定を行った.
2.観測および解析
微動観測は,防災科学技術研究所(2006)による地すべり地形区分に判別された小田地区及び田儀地区について,単点3成分観測を道路沿いに91点で実施した.また,直線上に設置した直線アレイ観測を34地点,直線アレイを組み合わせたL字アレイ観測を6地点で実施した.地震計はJU410(白山工業)を用い,サンプリング周波数は200Hzとし,観測時間は各地点で10~15分間としている.単点3成分記録については,水平動2成分に対する上下動のスペクトル比(H/V)を求め,卓越周期,ピーク値,形状などの特徴をまとめ分布図作成し,地すべり地域内の地盤構造の変化を調べた.また,直線及びL字アレイ観測では,SPAC法(Aki,1957)もしくはCCA法(Cho et al.,2006)を用いて位相速度分散曲線を求めその変化も調べた.また,L字アレイ地点においては,位相速度分散曲線とアレイ中心のH/Vを用いて,フォワードモデリングにより地盤構造を推定した.重力観測はラコスト・ロンバーグ重力計(G1034)を用いた.また,位置の測量にはGNSS測量機(Trimble R2)を用いて10cm以内の精度で決定されている.測定データは各種補正を施し重力異常を求めた.基盤の仮定密度を2.4g/cm^3として重力異常を求め,2次元および3次元解析により均質2層の密度構造を推定した.密度構造では表層と基盤の密度差を0.4g/cm^3とし,2次元解析では断面の両端で基盤が露頭するように拘束条件を与えた.また,3次元解析では1000mの上方接続フィルターにより長波長成分を取り除き,2次元解析と同じ基盤露頭点2か所に拘束条件を与えた.
3.地盤構造
微動観測の解析結果より,地すべり地域の崖錐堆積物のS波速度は150~400m/sであり,基盤岩まで層厚は10~20m程度であることが分かった.また,H/Vの特徴として,長周期側(1~2秒)と短周期側(0.1~0.4秒)にピークがみられる.短周期側の卓越周期は崖錐堆積物の層厚に対応しており,地すべり移動体で厚くなる傾向がみられるが,滑落崖のすぐ近くで周期が長くなる箇所もみられた.また,長周期側の卓越周期は地震基盤までの層厚に対応している可能性があり,今後大規模な微動アレイ観測や多伎町役場の地震記録を用いた解析により深部構造より精度良く推定する予定である.重力観測の解析結果より,地すべり地域内に低重力異常の領域が局所的にみられた.2次元解析による密度構造断面では表層の層厚が最大で400m程度になることがわかった.また,3次元解析による基盤面の分布より,小田地区では,地すべり移動体内で基盤の起伏が激しく,複数数の移動体のブロックが存在することが関係していると思われる.また,田儀地区では一つの移動体のブロックの全体で基盤が深くなることがわかった.このことより,地すべり地形内でも基盤の深さが局所的に変化していることがわかった.