[S16P-09] リニアアレイ微動探査および表面波探査による海底設置ノードを用いた海底下S波速度構造の推定
海底S波速度構造の推定を目的とした海底地盤調査において、水深50m程度までの浅海域から水深300m程度までの中深度海域まで適用可能な手法を検討している。浅海域の調査手法として一般にSPAC法微動アレイ調査が適用されるが、水深50mを超える水深での適用例は少ない。そこで海域音波探査調査において用いられるOBN(Ocean Bottom Node、 海底設置ノード)をリニアアレイ設置し、取得された微動データの解析と音波探査発震記録を用いた表面波解析を組み合わせる手法を検討し、実測データに対して適用した。
本手法ではエアガン等の震源とストリーマーによる2次元、3次元海域音波探査調査において、同時にリニアアレイ設置したOBNにおいて取得されたデータを使用する。アレイライン上の連続微動観測記録を用いて地震波干渉法によりOBN間の疑似発震記録を作成し、分散曲線を抽出する。一方で、音波探査震源によるアレイライン上発震記録を用いて、OBN共通受振記録から表面波解析により分散曲線を抽出する。微動アレイ解析で得られる分散曲線は2~5Hz程度の低周波数帯域であり、一方で、表面波探査から得られる分散曲線は5~30Hz程度で観測されるため、それぞれの分散曲線を統合することにより広帯域の分散曲線を構築する。構築された分散曲線から1次元S波速度構造インバージョン解析により海底下S波速度構造を求める。
2020年に別府湾で実施した3D音波探査(川崎ほか、2023; 小澤ほか、2024; 寺西他、2022; 寺西ほか、2020; 須田ほか、2020a; 須田ほか、2020b)において、同時にOBNを設置し、取得したデータを用いて本手法を適用した。微動アレイ解析および表面波解析により得られた統合分散曲線のインバージョン解析によって、海底下30m程度までのS波速度構造が得られた。同海域の工学的基盤(S波速度400m/s以上が5m連続する深度)の検出が可能になったと考えられる。通常の微動アレイ調査が困難な中深度海域に対し、本手法では3次元音波探査の実施にあわせてOBN設置を行い、微動アレイ+表面波解析によるS波速度構造推定を提案する。
謝辞
別府湾の調査は、京都大学地球熱学研究施設との共同研究として2020年に実施したものである。現地調査の実施に際して、京都大学の大沢信二教授、竹村恵二名誉教授からお力添えを頂きました。深く感謝いたします。
参考文献
川崎慎治・原彰男・小澤岳史(2023)、沿岸浅海域の海底活断層調査における三次元高分解能音波探査の有用性、地震学会2023年度秋季大会
小澤岳史・寺西陽祐・赤間健一・川崎慎治(2024)、HRSによる浅層高分解能地質情報の抽出とCCS事業への貢献、令和6年度 石油技術協会 春季講演会
須田茂幸・多良賢二・菊地秀邦・小澤岳史・東中基倫・齋藤秀雄・川崎慎治(2020a)、海底地盤調査における浅部S波速度構造の推定、物理探査学会第143回学術講演会論文集、127-130.
須田茂幸・小澤岳史・村上文哉・佐藤紀男・塚原均・今野恵(2020b)、デュアルソースによるUHR2D音波探査システム実証実験、物理探査学会第143回学術講演会論文集、131-134.
寺西陽祐・齊藤秀太郎・塚原均・村上文俊・川崎慎治・小澤岳史・東中基倫(2022)、海底浅層高分解能三次元地震探査技術に関する実証試験、物理探査、75、60-69.
寺西陽祐・村上文俊・塚原均・今野政明・今野恵・佐藤紀男・川崎慎治・東中基倫・小澤岳史・須田茂幸・猪野滋・阿部進・竹村恵二・大沢信二(2020)、高分解能三次元地震探査システム実証試験(別府湾での調査例)、物理探査学会第143回学術講演会論文集、123-126.
本手法ではエアガン等の震源とストリーマーによる2次元、3次元海域音波探査調査において、同時にリニアアレイ設置したOBNにおいて取得されたデータを使用する。アレイライン上の連続微動観測記録を用いて地震波干渉法によりOBN間の疑似発震記録を作成し、分散曲線を抽出する。一方で、音波探査震源によるアレイライン上発震記録を用いて、OBN共通受振記録から表面波解析により分散曲線を抽出する。微動アレイ解析で得られる分散曲線は2~5Hz程度の低周波数帯域であり、一方で、表面波探査から得られる分散曲線は5~30Hz程度で観測されるため、それぞれの分散曲線を統合することにより広帯域の分散曲線を構築する。構築された分散曲線から1次元S波速度構造インバージョン解析により海底下S波速度構造を求める。
2020年に別府湾で実施した3D音波探査(川崎ほか、2023; 小澤ほか、2024; 寺西他、2022; 寺西ほか、2020; 須田ほか、2020a; 須田ほか、2020b)において、同時にOBNを設置し、取得したデータを用いて本手法を適用した。微動アレイ解析および表面波解析により得られた統合分散曲線のインバージョン解析によって、海底下30m程度までのS波速度構造が得られた。同海域の工学的基盤(S波速度400m/s以上が5m連続する深度)の検出が可能になったと考えられる。通常の微動アレイ調査が困難な中深度海域に対し、本手法では3次元音波探査の実施にあわせてOBN設置を行い、微動アレイ+表面波解析によるS波速度構造推定を提案する。
謝辞
別府湾の調査は、京都大学地球熱学研究施設との共同研究として2020年に実施したものである。現地調査の実施に際して、京都大学の大沢信二教授、竹村恵二名誉教授からお力添えを頂きました。深く感謝いたします。
参考文献
川崎慎治・原彰男・小澤岳史(2023)、沿岸浅海域の海底活断層調査における三次元高分解能音波探査の有用性、地震学会2023年度秋季大会
小澤岳史・寺西陽祐・赤間健一・川崎慎治(2024)、HRSによる浅層高分解能地質情報の抽出とCCS事業への貢献、令和6年度 石油技術協会 春季講演会
須田茂幸・多良賢二・菊地秀邦・小澤岳史・東中基倫・齋藤秀雄・川崎慎治(2020a)、海底地盤調査における浅部S波速度構造の推定、物理探査学会第143回学術講演会論文集、127-130.
須田茂幸・小澤岳史・村上文哉・佐藤紀男・塚原均・今野恵(2020b)、デュアルソースによるUHR2D音波探査システム実証実験、物理探査学会第143回学術講演会論文集、131-134.
寺西陽祐・齊藤秀太郎・塚原均・村上文俊・川崎慎治・小澤岳史・東中基倫(2022)、海底浅層高分解能三次元地震探査技術に関する実証試験、物理探査、75、60-69.
寺西陽祐・村上文俊・塚原均・今野政明・今野恵・佐藤紀男・川崎慎治・東中基倫・小澤岳史・須田茂幸・猪野滋・阿部進・竹村恵二・大沢信二(2020)、高分解能三次元地震探査システム実証試験(別府湾での調査例)、物理探査学会第143回学術講演会論文集、123-126.