1:30 PM - 1:45 PM
[S17-07] Enhancing Indonesia's Tsunami Early Warning System using W phase Inversion
はじめに
インドネシア気象庁(BMKG)では、現在500点近くの観測点に広帯域地震計を設置し、リアルタイムでデータが本部(ジャカルタ)に送られている。また、W-phaseインバージョンによるモーメントテンソル解の推定プログラムが津波警報システム内のSeisCompソフトに組み込まれているものの、その性能は評価されていない。本研究では、インドネシア気象庁の津波警報システム(InaTEWS)の中で即時的に大地震の規模とメカニズムを精度よく決定するために、W-phaseインバージョンによるモーメントテンソル解の推定がどの程度効果的であるかを評価する。
データと手法
多くの広帯域地震計によるデータが存在する2020年から2024年の期間にインドネシアで発生したM6.5以上の23個の地震についてW-phaseインバージョン解析を実施し、グローバルCMTのよる解と比較する事で、津波警報への利用を踏まえて即時的に高精度なメカニズムと規模が得られるかを評価した。地震発生後早期にモーメントテンソル解を得るために、できる限り震源近傍の観測データをだけ用いてかつ精度良く推定することを目指し、先行研究(Zhao et al., 2017)に従って、P波初動到達から180秒間の波形データを利用することとした。さらに、震源距離5°以内(地震発生から5分以内の波形)、12°以内(地震発生から6分以内の波形)、20°以内(イベントによっては15°以内)の観測点を用いてそれぞれW-phaseインバージョン解析を実施し、グローバルCMT解析結果を比較した。2つのモーメントテンソル解の差の定量化には、Zhao et al.(2017)により定義されたAngular differenceを用いた。
結果
W-phaseインバージョンの結果、Mwは震源距離5度以内でも極端に利用できる波形の数が少ない場合を除いて0.2程度の誤差で推定できる事が示された。ただ震源位置によっては5°以内に入る観測点数が1-3点になる場合がありその場合は推定誤差が大きくなる。メカニズムについても利用できる波形が多ければ震源距離が5°以内でもある程度上手く推定できる事が分かった。震源距離12°以内に広げれば十分良く推定できる事が分かった。ただし、Angular difference が30度以内のメカニズムを確実に得るためには、20以上の波形が利用できることが望ましい事も明らかになった。また、W-phaseインバージョン手法には自動的に波形をスクリーニングする機能があり、平常時に大きなノイズを含む観測波形や使用する時間窓に欠損のある観測波形を除いた後、1度インバージョンを実施した後、大きな誤差のある波形を取り除く機能を搭載している。この機能は震源から離れた観測点でS/N比の悪い波形が最初のインバージョン時に多く入っていると、上手く機能しないことが分かった。そのため、津波警報への利用を考える場合、適切な震源距離で打ち切ることも重要となる。
結論
インドネシアの津波警報システムとして、即時的に大地震の規模とメカニズムを推定するために、インドネシアに展開された広帯域地震計で観測された地震波形にW-phaseインバージョンを適用することは有効であることが明らかになった。震源距離12°以下(地震発生から6分未満の波形を利用)すれば精度良く、Mwとメカニズムが推定される事が分かった。ただし、地震発生場所によっては観測点数が不足する場合があり、W-phaseインバージョンに利用できる波形の数が20に達するまでは震源距離を延ばす必要がある。
参考論文
Zhao, X., Duputel, Z., & Yao, Z. (2017). Regional W-Phase Source Inversion for Moderate to Large Earthquakes in China and Neighboring Areas. Journal of Geophysical Research: Solid Earth, 122(12). https://doi.org/10.1002/2017JB014950
インドネシア気象庁(BMKG)では、現在500点近くの観測点に広帯域地震計を設置し、リアルタイムでデータが本部(ジャカルタ)に送られている。また、W-phaseインバージョンによるモーメントテンソル解の推定プログラムが津波警報システム内のSeisCompソフトに組み込まれているものの、その性能は評価されていない。本研究では、インドネシア気象庁の津波警報システム(InaTEWS)の中で即時的に大地震の規模とメカニズムを精度よく決定するために、W-phaseインバージョンによるモーメントテンソル解の推定がどの程度効果的であるかを評価する。
データと手法
多くの広帯域地震計によるデータが存在する2020年から2024年の期間にインドネシアで発生したM6.5以上の23個の地震についてW-phaseインバージョン解析を実施し、グローバルCMTのよる解と比較する事で、津波警報への利用を踏まえて即時的に高精度なメカニズムと規模が得られるかを評価した。地震発生後早期にモーメントテンソル解を得るために、できる限り震源近傍の観測データをだけ用いてかつ精度良く推定することを目指し、先行研究(Zhao et al., 2017)に従って、P波初動到達から180秒間の波形データを利用することとした。さらに、震源距離5°以内(地震発生から5分以内の波形)、12°以内(地震発生から6分以内の波形)、20°以内(イベントによっては15°以内)の観測点を用いてそれぞれW-phaseインバージョン解析を実施し、グローバルCMT解析結果を比較した。2つのモーメントテンソル解の差の定量化には、Zhao et al.(2017)により定義されたAngular differenceを用いた。
結果
W-phaseインバージョンの結果、Mwは震源距離5度以内でも極端に利用できる波形の数が少ない場合を除いて0.2程度の誤差で推定できる事が示された。ただ震源位置によっては5°以内に入る観測点数が1-3点になる場合がありその場合は推定誤差が大きくなる。メカニズムについても利用できる波形が多ければ震源距離が5°以内でもある程度上手く推定できる事が分かった。震源距離12°以内に広げれば十分良く推定できる事が分かった。ただし、Angular difference が30度以内のメカニズムを確実に得るためには、20以上の波形が利用できることが望ましい事も明らかになった。また、W-phaseインバージョン手法には自動的に波形をスクリーニングする機能があり、平常時に大きなノイズを含む観測波形や使用する時間窓に欠損のある観測波形を除いた後、1度インバージョンを実施した後、大きな誤差のある波形を取り除く機能を搭載している。この機能は震源から離れた観測点でS/N比の悪い波形が最初のインバージョン時に多く入っていると、上手く機能しないことが分かった。そのため、津波警報への利用を考える場合、適切な震源距離で打ち切ることも重要となる。
結論
インドネシアの津波警報システムとして、即時的に大地震の規模とメカニズムを推定するために、インドネシアに展開された広帯域地震計で観測された地震波形にW-phaseインバージョンを適用することは有効であることが明らかになった。震源距離12°以下(地震発生から6分未満の波形を利用)すれば精度良く、Mwとメカニズムが推定される事が分かった。ただし、地震発生場所によっては観測点数が不足する場合があり、W-phaseインバージョンに利用できる波形の数が20に達するまでは震源距離を延ばす必要がある。
参考論文
Zhao, X., Duputel, Z., & Yao, Z. (2017). Regional W-Phase Source Inversion for Moderate to Large Earthquakes in China and Neighboring Areas. Journal of Geophysical Research: Solid Earth, 122(12). https://doi.org/10.1002/2017JB014950