9:15 AM - 9:30 AM
[S21-02] Discriminating Seismic Motion from Train Vibration Using Recurrent Neural Networks for Railway Earthquake Early Warning Systems
新幹線の早期警報用地震計は、沿線の変電所内などに設置され、地震動以外にも列車通過時の振動等を観測する。当然ながら、その頻度は地震動よりも高い。現在の地震計は、P波開始から最短1秒のデータで地震諸元を推定して警報出力判定を行う(P波警報)ため、その短時間のデータから振動が列車等によるものか地震動かを正確に識別(分類)する必要がある。P波開始からの時間が短い場合、その振幅は大きくなっていない場合があり、列車振動と誤認する可能性がある。現行手法によるこの識別の再現率(Recall)は、地震動・列車振動ともに約90%である(岩田・他,2016)。地震動を正確に識別できない場合でも、しきい値超過判定に基づく警報(S波警報)を出力することができる。しかしながら、P波警報を出力することができないため、警報出力が相対的に遅くなる可能性がある。したがって、この識別精度の向上は、警報の迅速化および地震時の走行列車の安全性向上に直結する。本研究では、時間的な再帰性を考慮したニューラルネットワーク(Recurrent Neural Network: RNN)をこの問題に適用し、その識別精度を評価した結果を報告する。
RNNは、時系列データの処理に適したニューラルネットワークの一種であり、過去の入力情報を保持し、それを次の入力処理に反映させることで、時間的な連続性のパターンや相関関係を学習することができる(例えばPanakkat & Adeli, 2007)。しかし、標準的なRNNには、長いシーケンスにわたる依存関係を学習する場合、勾配消失や重み衝突などの課題が存在する。これらの問題を解決するために、LSTM(Long Short-Term Memory)やGRU(Gated Recurrent Unit)といった拡張モデルが提案されている(例えばTitos et al., 2019)。本研究では、LSTMとGRUを用いて解析を行い、その有効性を評価する。
解析に使用したデータは、列車振動に関しては、新幹線地震計で観測された10,002個の波形記録(岩田・他,2016)、および鉄道総合技術研究所の日野土木実験所(東京都日野市)内で観測された在来線列車による5,687個の波形記録である。なお、この日野土木実験所のデータには、周辺を走行する自動車による交通振動も含まれている。地震動データは、防災科学技術研究所の強震観測網K-NETで観測された10,210個の波形記録を使用した。RNNモデルには、1秒ごとの3成分加速度振幅値をシーケンスとして入力し、列車振動データはすべて非地震動(ラベル0)としてラベリングした。列車は遠方から徐々に接近し、振動開始時点を明確に決定することが容易ではないため、常時微動や強い振幅を示す列車振動も同様にラベル0とした。
地震動データについては、STA/LTA法(Allen, 1978)を用いてP波開始時刻を決定した。さらに、地震動振幅レベルがP波開始前のノイズレベルの5倍以下となる状態が3秒以上継続した時点をもって地震動の終了と判定した。1秒のシーケンス内に0.3秒以上の地震動シグナル部(P波開始から地震動終了まで)が含まれるものを地震動(ラベル1)とし、それ以外は非地震動(ラベル0)とした。時間的な連続性を考慮するため、1つの波形記録内のシーケンスデータはシャッフルせず、波形記録自体を列車振動・地震動を問わずランダムにシャッフルした。データは、訓練用、検証用、テスト用にそれぞれ60%、20%、20%の割合で分割した。
解析には、TensorFlowを用いてLSTMおよびGRUモデルを構築した。過学習を防ぐため、検証用データの損失が5エポック連続で改善しない時点で学習を停止させた。以下に示す結果は、学習を停止させた時点までで最良の検証損失を示したエポックのモデルを用いて、テスト用データに対して評価したものである。解析によって得られた精度(Accuracy)、適合率(Precision)および再現率(Recall)などの各指標は、LSTMとGRUを用いた場合で有意な差は認められない。ただし、GRUのほうが1シーケンスあたりの平均処理時間がわずかに短い傾向が確認された。Accuracyなどの指標にはハイパーパラメータによる影響が見られるが、例えば隠れ層の数=3、ユニット数=128等と設定したLSTMモデルの場合、Accuracyは99%、非地震動および地震動のRecallはそれぞれ99%、97%という結果が得られた。これは、現行地震計の処理手法による値(共にRecallは約90%;岩田・他,2016)と比較して有意に高い値である。この結果から、RNNを地震動と列車振動の識別に適用することで、地震警報の出力精度を向上させる可能性が示唆された。今後は、本手法を実装した早期警報用地震計の開発を目指す。
RNNは、時系列データの処理に適したニューラルネットワークの一種であり、過去の入力情報を保持し、それを次の入力処理に反映させることで、時間的な連続性のパターンや相関関係を学習することができる(例えばPanakkat & Adeli, 2007)。しかし、標準的なRNNには、長いシーケンスにわたる依存関係を学習する場合、勾配消失や重み衝突などの課題が存在する。これらの問題を解決するために、LSTM(Long Short-Term Memory)やGRU(Gated Recurrent Unit)といった拡張モデルが提案されている(例えばTitos et al., 2019)。本研究では、LSTMとGRUを用いて解析を行い、その有効性を評価する。
解析に使用したデータは、列車振動に関しては、新幹線地震計で観測された10,002個の波形記録(岩田・他,2016)、および鉄道総合技術研究所の日野土木実験所(東京都日野市)内で観測された在来線列車による5,687個の波形記録である。なお、この日野土木実験所のデータには、周辺を走行する自動車による交通振動も含まれている。地震動データは、防災科学技術研究所の強震観測網K-NETで観測された10,210個の波形記録を使用した。RNNモデルには、1秒ごとの3成分加速度振幅値をシーケンスとして入力し、列車振動データはすべて非地震動(ラベル0)としてラベリングした。列車は遠方から徐々に接近し、振動開始時点を明確に決定することが容易ではないため、常時微動や強い振幅を示す列車振動も同様にラベル0とした。
地震動データについては、STA/LTA法(Allen, 1978)を用いてP波開始時刻を決定した。さらに、地震動振幅レベルがP波開始前のノイズレベルの5倍以下となる状態が3秒以上継続した時点をもって地震動の終了と判定した。1秒のシーケンス内に0.3秒以上の地震動シグナル部(P波開始から地震動終了まで)が含まれるものを地震動(ラベル1)とし、それ以外は非地震動(ラベル0)とした。時間的な連続性を考慮するため、1つの波形記録内のシーケンスデータはシャッフルせず、波形記録自体を列車振動・地震動を問わずランダムにシャッフルした。データは、訓練用、検証用、テスト用にそれぞれ60%、20%、20%の割合で分割した。
解析には、TensorFlowを用いてLSTMおよびGRUモデルを構築した。過学習を防ぐため、検証用データの損失が5エポック連続で改善しない時点で学習を停止させた。以下に示す結果は、学習を停止させた時点までで最良の検証損失を示したエポックのモデルを用いて、テスト用データに対して評価したものである。解析によって得られた精度(Accuracy)、適合率(Precision)および再現率(Recall)などの各指標は、LSTMとGRUを用いた場合で有意な差は認められない。ただし、GRUのほうが1シーケンスあたりの平均処理時間がわずかに短い傾向が確認された。Accuracyなどの指標にはハイパーパラメータによる影響が見られるが、例えば隠れ層の数=3、ユニット数=128等と設定したLSTMモデルの場合、Accuracyは99%、非地震動および地震動のRecallはそれぞれ99%、97%という結果が得られた。これは、現行地震計の処理手法による値(共にRecallは約90%;岩田・他,2016)と比較して有意に高い値である。この結果から、RNNを地震動と列車振動の識別に適用することで、地震警報の出力精度を向上させる可能性が示唆された。今後は、本手法を実装した早期警報用地震計の開発を目指す。