日本地震学会2024年度秋季大会

講演情報

C会場

特別セッション » S21. 情報科学との融合による地震研究の加速

[S21] AM-1

2024年10月22日(火) 09:00 〜 10:30 C会場 (3階中会議室302)

座長:寒河江 皓大(産業技術総合研究所)、加藤 慎也(東京大学)

10:15 〜 10:30

[S21-06] Random Forestによる四国西部の連続地震波形記録に基づくスロースリップイベントの検出

*大竹 和機1、加藤 愛太郎1、岡田 悠太郎2、西村 卓也3 (1. 東京大学地震研究所、2. 東北大学災害科学国際研究所、3. 京都大学防災研究所)

南海トラフのプレート境界では、固着域と深部安定すべり域の遷移領域においてスロー地震が起きている。スロー地震には、測地学的帯域で観測されるスロースリップイベント(SSE)と、地震学的帯域で観測される低周波地震(LFE)や微動(tremor)等が知られており、巨大地震との関連が指摘されている(Obara and Kato, 2016)。近年、継続時間が数日程度の短期的SSE(S-SSE)が、GNSSデータを用いて検出されるようになったものの(Nishimura et al., 2013, Okada et al., 2022)、傾斜計やひずみ計に比べてGNSSデータは感度が低いためS-SSEの検出が難しく、特に小さな規模のSSEは見逃している可能性がある。一方で、SSEと微動の同期現象は、カスカディア沈み込み帯で発見され(Rogers and Dragert, 2003)、その後西南日本でも見つかった(Obara et al., 2004)。Rouet-Leduc et al. (2019)は、カスカディア沈み込み帯の連続地震波形記録に機械学習を適用することで、SSEの発生に関連するGNSS観測点の変位速度の時間変化を予測できることを示した。他の地域の異なるテクトニクス環境でも機械学習により連続地震波形記録を用いてGNSS変位速度の時間変化を予測できるか検証することが重要である。本研究では、四国西部の連続地震波形記録を用いて、機械学習によりGNSS観測点の変位速度の時間変化を予測し、S-SSEを検出することを目的とする。
 2004年4月から2020年3月までの四国西部の複数のHi-net観測点で取得された地震波形記録を用いて、1日ごとに統計的特徴量を計算した。測地データとしては、四国西部周辺の複数のGEONET観測点について、Okada et al. (2022)の方法でGNSS変位速度を計算した。GNSSシグナルを強調するために、Bletery and Nocquet (2023)に従って、観測変位速度とスタックされたSSE期間の理論変位(Kano et al., 2019)との内積和を計算した。決定木のアンサンブルであるランダムフォレストによりモデルを構築し、連続地震波形記録の統計的特徴量からGNSS変位速度の時間変化を予測した。予測されたGNSS変位速度が1mm/yearより大きいタイミングを、S-SSEとして検出した。検出された各S-SSEについて変位速度を時間積分して変位分布を求め、すべりインバージョンにより断層モデルを推定した。その結果、モデルのGNSS変位速度の推定値は実際のGNSS変位速度と高い相関を示した。このモデルは地震波形記録の変化からS-SSEと考えられる変位速度の応答を検出し、そのほとんどはOkada et al. (2022)のS-SSEカタログのイベントに対応し、さらにカタログにないイベントも新たに検出された。本研究は、連続地震波形記録を用いて、機械学習により南海トラフ沿いで発生するSSEをより高精度に検出できる可能性を示す。