2:45 PM - 3:00 PM
[S22-12] Rupture process of the 2024 Noto peninsula earthquake derived from strong motion, teleseismic, and geodetic data
2024年1月1日に発生したMJMA7.6の2024年能登半島地震では,石川県で震度7が観測され,7月30日時点の死者は299人,全壊住家約6200棟と甚大な被害が出た.地震後の地震活動は能登半島北西部から東方沖にかけて長さ約150kmの幅広い範囲に分布しており,地震後の調査などから,この地震は能登半島北部沿岸部に存在する既知の活断層が関係していると見られる.陸域でのこのような大規模な地殻内地震の観測記録は貴重であり,それらを分析し,地震の破壊過程を明らかにすることは重要である.そこで,本研究では強震・遠地・測地データを用いて震源過程解析を行った.
強震データはK-NET,KiK-net,F-net,JMAの観測点から28点を選択して使用した.解析の際は,1Dグリーン関数を使用することと震源域と観測点までの構造や距離を考えて,観測地点によって解析帯域・波形種別を変更した.具体的には①能登半島内および舳倉島の点は0.03 ~ 0.3 Hzの帯域の速度波形,②佐渡島内のK-NETは0.03 ~ 0.07 Hzの帯域の速度波形,③能登半島外のF-netは0.01 ~ 0.05 Hzの帯域の変位波形を使用した.遠地データはIRIS-DMCで波形が入手可能な観測点から,方位角分布を考えて35点を選択して使用した.解析には0.01-0.4 Hzの帯域の変位波形を用いた.測地データは,震央距離が約150 km以内の国土地理院のGEONETおよびREGMOSの観測点の日々の座標値(F5解)を用いた.地震時の変位はGEONET三隅(950388)を固定し,地震前7日間の平均値と1月2日の座標値の差を取ることによって求めた.
震源インバージョン手法はマルチタイムウィンドウ線形インバージョン法(Yoshida et al. 1996; Hikima and Koketsu, 2005)を用いた.グリーン関数は強震・遠地・測地すべて1次元地下構造モデルを用い,それぞれKohketsu(1985),Kikuchi and Kanamori(1991),Zhu and Rivera(2002)の手法で計算した.グリーン関数の計算に用いた1次元地下構造モデルは,強震観測点については,全国一次地下構造モデル(JIVSM, Koketsu et al., 2009; 2012)の各観測点直下をベースとし,能登半島内および舳倉島の観測点については複数の中地震記録を用いて調整を行った.遠地観測点付近の構造はJ-Bモデルとした.遠地の震源付近の構造と測地観測点についてはJIVSMのGEONET輪島2(020971)直下の構造を用いた.
断層モデルの構築にあたっては,①地震後24時間の余震分布,②既知の断層線(e.g., 岡村, 2002; 岡村・他,2024),③海上保安庁による地震後の海底地形調査結果(地震調査研究推進本部,2024a,b),④海底地震計記録を用いて再決定された余震分布(e.g., 篠原・他, 2024)を参考にした.なお,①の地震後の余震分布については,HypoDD法(Waldhauser and Ellsworth, 2000)により再決定したものを用いた.また,気象庁カタログにおけるMJMA 7.6とその約13秒前のMJMA 5.9の地震による波の分離は困難であったため,MJMA 5.9の地震の震源を破壊開始点として,2つを一連の地震としてモデルを構築した.構築した断層モデルは複数の面から成り,最も北東に位置する北西傾斜の面を除き,すべて南東傾斜である.南東傾斜の面の走向と傾斜はそれぞれ25°~65°,25°~50°の範囲であり,一部の面は震源分布に合わせるため傾斜方向に折り曲げている.また,MJMA 5.9の震源付近については,主断層と並行断層の2枚の面を設定した.MJMA 5.9の震源は長さ15kmの並行断層上の中央に位置する.断層全体の長さは震源付近で2重となっている面を除き145 km,幅は25 kmである.インバージョン解析では断層を5 km×5 kmの小断層に分割し,基底関数としては幅2.5秒の箱型関数を8個設定した.第1タイムウィンドウの破壊時刻を決める同心円状の破壊フロントの伝播については,予備解析を踏まえて,並行断層西端から主断層側へ乗り移ることとし,乗り移りに4sの遅れを仮定した.なお,以上の主モデルの複雑な箇所を単純化した副モデルも併せて検討した.
解析の結果,能登半島北東沖、震源やや西、能登半島北西部にそれぞれ6~9m程度のピークを持つ大すべり域が得られた.破壊開始10秒後程度まではあまりすべりはなく,10秒後過ぎに震源やや西の部分の破壊が始まり,その後,能登半島北東沖および能登半島北西部へ破壊が進んだ.それら2ヵ所の大きな破壊はほぼ同時であった.地震モーメントは3.2×1020 Nm(Mw 7.6)と推定された.観測データは概ね良好に再現されている.能登半島北東沖のすべりによる各データへの寄与を計算したところ,強震波形については,舳倉島観測点の波形の後半部,佐渡島の観測点や震源より東側のF-net観測点の波形への寄与が大きく,能登半島内の観測点への寄与は小さかった.このことから,能登半島内の強震動には震源やや西と能登半島北西部の大すべりが大きく寄与したと考えられる.以上の結果は主・副断層モデルで共通に得られている.
強震データはK-NET,KiK-net,F-net,JMAの観測点から28点を選択して使用した.解析の際は,1Dグリーン関数を使用することと震源域と観測点までの構造や距離を考えて,観測地点によって解析帯域・波形種別を変更した.具体的には①能登半島内および舳倉島の点は0.03 ~ 0.3 Hzの帯域の速度波形,②佐渡島内のK-NETは0.03 ~ 0.07 Hzの帯域の速度波形,③能登半島外のF-netは0.01 ~ 0.05 Hzの帯域の変位波形を使用した.遠地データはIRIS-DMCで波形が入手可能な観測点から,方位角分布を考えて35点を選択して使用した.解析には0.01-0.4 Hzの帯域の変位波形を用いた.測地データは,震央距離が約150 km以内の国土地理院のGEONETおよびREGMOSの観測点の日々の座標値(F5解)を用いた.地震時の変位はGEONET三隅(950388)を固定し,地震前7日間の平均値と1月2日の座標値の差を取ることによって求めた.
震源インバージョン手法はマルチタイムウィンドウ線形インバージョン法(Yoshida et al. 1996; Hikima and Koketsu, 2005)を用いた.グリーン関数は強震・遠地・測地すべて1次元地下構造モデルを用い,それぞれKohketsu(1985),Kikuchi and Kanamori(1991),Zhu and Rivera(2002)の手法で計算した.グリーン関数の計算に用いた1次元地下構造モデルは,強震観測点については,全国一次地下構造モデル(JIVSM, Koketsu et al., 2009; 2012)の各観測点直下をベースとし,能登半島内および舳倉島の観測点については複数の中地震記録を用いて調整を行った.遠地観測点付近の構造はJ-Bモデルとした.遠地の震源付近の構造と測地観測点についてはJIVSMのGEONET輪島2(020971)直下の構造を用いた.
断層モデルの構築にあたっては,①地震後24時間の余震分布,②既知の断層線(e.g., 岡村, 2002; 岡村・他,2024),③海上保安庁による地震後の海底地形調査結果(地震調査研究推進本部,2024a,b),④海底地震計記録を用いて再決定された余震分布(e.g., 篠原・他, 2024)を参考にした.なお,①の地震後の余震分布については,HypoDD法(Waldhauser and Ellsworth, 2000)により再決定したものを用いた.また,気象庁カタログにおけるMJMA 7.6とその約13秒前のMJMA 5.9の地震による波の分離は困難であったため,MJMA 5.9の地震の震源を破壊開始点として,2つを一連の地震としてモデルを構築した.構築した断層モデルは複数の面から成り,最も北東に位置する北西傾斜の面を除き,すべて南東傾斜である.南東傾斜の面の走向と傾斜はそれぞれ25°~65°,25°~50°の範囲であり,一部の面は震源分布に合わせるため傾斜方向に折り曲げている.また,MJMA 5.9の震源付近については,主断層と並行断層の2枚の面を設定した.MJMA 5.9の震源は長さ15kmの並行断層上の中央に位置する.断層全体の長さは震源付近で2重となっている面を除き145 km,幅は25 kmである.インバージョン解析では断層を5 km×5 kmの小断層に分割し,基底関数としては幅2.5秒の箱型関数を8個設定した.第1タイムウィンドウの破壊時刻を決める同心円状の破壊フロントの伝播については,予備解析を踏まえて,並行断層西端から主断層側へ乗り移ることとし,乗り移りに4sの遅れを仮定した.なお,以上の主モデルの複雑な箇所を単純化した副モデルも併せて検討した.
解析の結果,能登半島北東沖、震源やや西、能登半島北西部にそれぞれ6~9m程度のピークを持つ大すべり域が得られた.破壊開始10秒後程度まではあまりすべりはなく,10秒後過ぎに震源やや西の部分の破壊が始まり,その後,能登半島北東沖および能登半島北西部へ破壊が進んだ.それら2ヵ所の大きな破壊はほぼ同時であった.地震モーメントは3.2×1020 Nm(Mw 7.6)と推定された.観測データは概ね良好に再現されている.能登半島北東沖のすべりによる各データへの寄与を計算したところ,強震波形については,舳倉島観測点の波形の後半部,佐渡島の観測点や震源より東側のF-net観測点の波形への寄与が大きく,能登半島内の観測点への寄与は小さかった.このことから,能登半島内の強震動には震源やや西と能登半島北西部の大すべりが大きく寄与したと考えられる.以上の結果は主・副断層モデルで共通に得られている.