[S22P-07] Source Model of the 2024 Noto Peninsula Earthquake Estimated from the Broadband Ground Motion Records
令和6年能登半島地震は,能登半島西方沖から佐渡島西方沖までの断層を震源断層とするMw 7.5の地震で,国内で近年発生した内陸地殻内地震としては最大規模の地震であった.この地震によって,石川県の能登地方を中心に最大震度7(気象庁の震度階)を含む大きな地震動が観測され,震源周辺の強震観測点では,長い継続時間や複数のパルスを持つ波形記録が得られた,このような特徴を持つ地震動記録の生成要因について,震源の観点から調べた研究として,例えば,倉橋・他 (2024)では,周期5秒よりも長周期側の強震波形記録を用いたインバージョン解析から,本震時に複雑な震源破壊過程があったことを示唆している.一方で,より短周期を含む広帯域の地震動を再現する震源モデルを推定することは,上述した複雑で大きな地震動の生成要因を理解するために重要であるとともに,大規模な内陸地殻内地震の地震動予測のための震源スケーリング則を検証するためにも不可欠である.そこで,本研究では,0.1-10 Hzの広帯域の観測記録を対象とした経験的グリーン関数法による地震動シミュレーションによって,強震動生成域(SMGA)のモデル化を行った.
本研究では,石川県,富山県,新潟県のK-NET,KiK-netの計18地点を対象とした地震動シミュレーションを実施した(KiK-net観測点は地中記録を使用した).断層面は,震源再決定によって得られた余震分布を参考に設定した.ここでは,背景領域は考慮せず,震源周辺で観測された波形の特徴から5枚の正方形のSMGAを断層面上に仮定した.なお,気象庁は16時10分9秒の地震(前震とする)と16時10分22秒の地震(本震とする)を別々のイベントとしているが,ここで使用する観測記録は,前震と本震を1つのイベントとして取り扱う.経験的グリーン関数に使用する要素地震記録は,断層面の広がりを考慮して,2024年1月1日18時8分(Mw 5.6),2024年1月2日10時17分(Mw 5.4),2024年1月9日17時59分(Mw 5.9)の3つの空間的に異なる場所で発生した余震の記録を使用した.各SMGAのパラメータ(SMGAの大きさ,場所,SMGA内の破壊伝播速度,ライズタイム)は,観測記録がシミュレーションによって再現できるようまずは試行錯誤的に決定した.ただし,各パラメータは,今後,観測波形とシミュレーション波形の残差関数を用いて客観的に決定する予定である.
SMGAは珠洲市の下の震源付近に2枚,震央から東側の富山トラフ付近に1枚,輪島市直下付近に1枚,志賀町富来付近の下に1枚の合計5枚のモデルが推定された.これらのSMGAによって,シミュレーションに使用した18地点の観測記録は,概ね再現することができた.倉橋・他 (2024) の震源インバージョン解析による大きなすべり領域とこれらのSMGAは互いに空間的に近い位置にあることがわかったが,震源インバージョン解析の対象周期帯域で輪島市直下から富来付近に見られた大きなすべり領域に対しては,2枚のSMGAが別々に推定された.これは,ISK006(K-NET富来)やISKH04(KiK-net富来)の本解析の観測波形に見られる大きなパルスを説明するためで,短周期を含む広帯域の地震動を対象としたことで得られた結果と考えられる.また,震源付近の2枚のSMGAは,時間差14秒程度で破壊することにより,ISKH01(KiK-net珠洲)やISK002(K-NET正院)に見られる前震と本震の地震動をそれぞれ再現している.暫定的な結果として,本研究のSMGAモデルの大きさや応力降下量から計算される短周期レベルは,既往のスケーリング則(例えば,藤堂・他, 2022, 2023;染井・他, 2023)より若干大きいものの,過去の内陸地殻内地震の結果のばらつきの範囲内程度であることがわかった.
謝辞:解析に際しては,防災科学技術研究所のK-NET,KiK-netの強震記録を使用しました.本研究は,原子力規制庁の令和6年度原子力施設等防災対策等委託費(断層モデルを用いた地震動評価手法の信頼性向上に係る調査)事業の一部として実施されました.
本研究では,石川県,富山県,新潟県のK-NET,KiK-netの計18地点を対象とした地震動シミュレーションを実施した(KiK-net観測点は地中記録を使用した).断層面は,震源再決定によって得られた余震分布を参考に設定した.ここでは,背景領域は考慮せず,震源周辺で観測された波形の特徴から5枚の正方形のSMGAを断層面上に仮定した.なお,気象庁は16時10分9秒の地震(前震とする)と16時10分22秒の地震(本震とする)を別々のイベントとしているが,ここで使用する観測記録は,前震と本震を1つのイベントとして取り扱う.経験的グリーン関数に使用する要素地震記録は,断層面の広がりを考慮して,2024年1月1日18時8分(Mw 5.6),2024年1月2日10時17分(Mw 5.4),2024年1月9日17時59分(Mw 5.9)の3つの空間的に異なる場所で発生した余震の記録を使用した.各SMGAのパラメータ(SMGAの大きさ,場所,SMGA内の破壊伝播速度,ライズタイム)は,観測記録がシミュレーションによって再現できるようまずは試行錯誤的に決定した.ただし,各パラメータは,今後,観測波形とシミュレーション波形の残差関数を用いて客観的に決定する予定である.
SMGAは珠洲市の下の震源付近に2枚,震央から東側の富山トラフ付近に1枚,輪島市直下付近に1枚,志賀町富来付近の下に1枚の合計5枚のモデルが推定された.これらのSMGAによって,シミュレーションに使用した18地点の観測記録は,概ね再現することができた.倉橋・他 (2024) の震源インバージョン解析による大きなすべり領域とこれらのSMGAは互いに空間的に近い位置にあることがわかったが,震源インバージョン解析の対象周期帯域で輪島市直下から富来付近に見られた大きなすべり領域に対しては,2枚のSMGAが別々に推定された.これは,ISK006(K-NET富来)やISKH04(KiK-net富来)の本解析の観測波形に見られる大きなパルスを説明するためで,短周期を含む広帯域の地震動を対象としたことで得られた結果と考えられる.また,震源付近の2枚のSMGAは,時間差14秒程度で破壊することにより,ISKH01(KiK-net珠洲)やISK002(K-NET正院)に見られる前震と本震の地震動をそれぞれ再現している.暫定的な結果として,本研究のSMGAモデルの大きさや応力降下量から計算される短周期レベルは,既往のスケーリング則(例えば,藤堂・他, 2022, 2023;染井・他, 2023)より若干大きいものの,過去の内陸地殻内地震の結果のばらつきの範囲内程度であることがわかった.
謝辞:解析に際しては,防災科学技術研究所のK-NET,KiK-netの強震記録を使用しました.本研究は,原子力規制庁の令和6年度原子力施設等防災対策等委託費(断層モデルを用いた地震動評価手法の信頼性向上に係る調査)事業の一部として実施されました.