Japan Association for Medical Informatics

[2-C-1-OP2-6] 「べにばなネットにおける地域医療情報ネットワークの利用実績と運用上の課題に関する研究」

堀 陽1, 村上 正泰2 (1.公立学校共済組合東北中央病院, 2.山形大学大学院医学系研究科医療政策学講座)

現在、地域包括ケアシステムの構築が推進されるなかで、地域完結型医療を実現するため、全国で地域医療情報ネットワークの整備が進められている。山形県でも4つの二次医療圏ごとに整備され、村山二次医療圏のべにばなネットは、2014年10月に運用を開始して2016年10月時点で参加施設75施設となっている。本研究は、べにばなネットのアクセス履歴の分析、質問紙調査を行い、利用実績と医療機関における対応状況を明らかにすることで、現状の課題と改善策を提示するものである。
 2015年10月1日~2016年9月30日までのアクセス数を分析したところ、総件数15,114件中、山形県立中央病院と山形大学医学部附属病院の診療情報が主に参照されていた。参加施設が他医療機関の診療情報を参照した件数は、ケアミックス病院が最も多く、次いで診療所であり、約9割が急性期病院の診療情報を参照していることから、利用範囲に偏りがみられることがわかった。参照された情報種類は診療録情報が最も多く、診療録情報のニーズが高いことがわかった。
 質問紙調査により、約8割の施設で有用との回答があり、「紹介・逆紹介をした患者の状態が確認でき、一貫した治療が容易になった」とする施設が多かった。他方で、「べにばなネットの操作や患者説明により医療従事者の手間が増えた」とする回答もあった。また、「不便に感じる」との回答もあり、Human BridgeとID-Linkの異なるシステムが並存していることに起因するものであった。
 べにばなネットを利用する施設に偏りがみられるものの、地域医療情報ネットワークの有用性を示すことができたが、今後の課題として、地域包括ケアシステムを構築するためにも、ネットワークの規模拡大、更なる広報活動の推進、異なるシステムの相互連携、診療録情報の全面開示、医療従事者の負担軽減などに取り組む必要があることが明らかになった。