Japan Association for Medical Informatics

[2-E-2-AS1-1] 全国消化器内視鏡診療データベースと内視鏡画像融合による新たな統合型データべース構築に関する研究

田中 聖人 (日本消化器内視鏡学会(京都第二赤十字病院))

消化器内視鏡機器のシェアは世界の70%を日本製品が占めており、学術的な研究、技術の先進性はわが国が世界をリードしている。国内の年間の消化器内視鏡診療件数は約1300万件で、診療画像は億を超える枚数であるが、臨床研究の基礎となる膨大な診療データと画像を集積する大規模データベースが存在しない。また、内視鏡診療においては、画像診断という知的習熟が必須で、人工知能による画像診断等の支援システムによる、術者を選ばない精確な診療の均霑化が求められている。このような現状を踏まえ、消化器内視鏡診療領域においても全国統計・臨床研究のレジストリとしての悉皆性を持ったデータ収集が可能な情報基盤の整備と、膨大な診療情報・画像を統合管理するデータベースの構築が急がれる。今回の研究では診療情報と画像を各ベンダーが提供する内視鏡部門システムへ保存するという内視鏡診療の特性を生かし、大規模なデータベース構築の基盤を形成する。
しかし、ベンダー側でデータ外部出力やデータ構造・用語に関する標準化がまったく考慮されておらず、部門システムを介してデータを収集する際の大きな障壁となっていた。そこで、各診療施設の内視鏡部門システムから、症例データと画像データの抽出後に個人情報を自動で除去し、学会サーバへ送信する施設側ゲートウェイアップローダを開発し、部門システムから直接データを抽出加工することにより、二重入力無しにデータの信頼性が担保され、データ収集プロセスの煩雑な作業を可能な限り自動化する事を目的としている。
こうして得られたものによって①医療の質向上、安全に関するデータ分析研究、②集積された大規模症例データの解析により臨床研究の次元が拡がり、③疾患予防に繋がる背景情報の検証や、④偶発症リスクの低減が可能となる。
本シンポジウムでは現在の進捗状況と問題点、そして今後長期的に広がる未来に関して概説する。