一般社団法人 日本医療情報学会

[2-F-3-OP10-3] 医業未収金の予防についての新たな方策 ‐AIによる未収患者の特徴量の抽出と予防効果について‐

奥村 拓史1, 梁瀬 鐵太郎1, 福田 健1, 前間 孝久1, 相馬 陽一2, 辻村 弘子2, 加塩 大吾2 (1.株式会社三菱総合研究所, 2.東京慈恵会医科大学附属柏病院)

【研究の背景と目的】
超高齢化社会の到来による社会保障財源の逼迫により病院経営を取り巻く環境は一層厳しさを増している。医業未収金問題は病院経営上の問題にとどまらず、いまや社会課題として広く認知されている。
未収金への対応策は「未然」と「発生後」の対策に大別される。前者はマニュアル整備と実行、後者は回収の外部委託が一般的だが、いずれも労力の割に効果が乏しく、未だ解決に至っていない。
本稿では「未然の対策」としてAIを使った新たな解決策の提案を行う。さらに、実証実験を行い、その効果についての報告も行う。

【方法】
 入院患者25,000人のデータを用い統計的手法ならびに機械学習による未収患者予測モデルの構築を行う。対象は支払い能力があるにも関わらず診療費を支払わない悪意のある患者である。したがって、生活困窮者は対象から除外した。最適なモデル選択のためにさまざまな手法による精度比較を行う。その結果をもとに、最終モデルを選択し全員のスコアリングを行う。そしてランク毎のアクションプランを作成・実行する。

【分析結果】
 精度比較の結果、ロジット・モデルを最終モデルとした。未収患者の特徴量として5つの変数が選択された。スコアによりカットオフラインを設定し、患者をグリーン(対策なし)、イエロー(要ウォッチ)、レッド(要対策)の3つに大別した。レッドは全患者のたかだか9%に過ぎないが未収患者の80%を捕捉できる。これにより「未然の対策」の大幅な効率化が可能となるだけでなく、大きな予防効果が期待できる。

【結語】 
 未定
* 実証実験(POC)は2017年8月~10月にかけて行う予定である。学会報告の機会を得られれば、実証結果を含めた結語とし報告を行いたい。