一般社団法人 日本医療情報学会

[2-F-3-OP10-5] 急性期病院における転倒転落事故の探索的リスク要因解析

野原 康伸1, 鴨打 正浩2, 中島 直樹1 (1.九州大学病院, 2.九州大学大学院医学研究院)

【はじめに】病院における転倒転落事故は外傷や骨折につながり、患者QoLに大きな影響を及ぼす深刻な問題の一つである。古くから防止対策が取られているものの、患者の高齢化に伴い事故は増加傾向にあり、より一層の対策が求められている。本研究では、入院患者に関する様々なデータを収集し、その中から探索的なアプローチにより転倒転落事故に関連するリスク要因を抽出することで、今後の転倒転落対策に生かすことを目的とする。
【方法】2016年2月~3月に急性期病院Aで起きた転倒転落事故事例、および同時期に入院した20歳以上の全患者を対象として、DPCの様式1とEFファイル(各日の薬効分類毎の薬の処方)、看護必要度、転倒転落アセスメント結果を収集した。期間中の延べ入院人数は51886人日(患者数3447名)であり、918のデータ項目が抽出された。転倒転落が起きたか否かを目的変数(アウトカム)、残りを説明変数として予測器を作成した。予測器には決定木を用いた機械学習アルゴリズムの一つであるGradient Boosting Decision Treeを用いた。各説明変数が予測にどの程度寄与したかを示す変数重要度を計算し、重要度の高い説明変数に対して、当該変数がアウトカムにどのような影響を及ぼすかをPartial Dependence Plotにより調査した。
【結果と考察】作成された予測器の汎化性能は0.763であった。変数重要度が高い変数として、転倒転落リスク評価結果(スコアが高いほど事故リスクが高い)のような当然の変数だけでなく、喫煙指数(喫煙する人ほど事故リスクが高い)も重要変数として抽出された。患者がこっそり喫煙しようとして転倒した場合は、患者が正直に報告しづらく事故報告書には直接上がってこない。探索的な本手法でなければ抽出できなかった事例の可能性があり、交絡調整等の詳細解析を実施する計画である。