Japan Association for Medical Informatics

[2-G-1-OP5-6] クリニカルパスと入院時記録を用いた患者状態の推定

山下 貴範1, 若田 好史1, 副島 秀久3, 中島 直樹1, 廣川 佐千男2 (1.九州大学病院メディカル・インフォメーションセンター, 2.九州大学情報基盤研究開発センター, 3.済生会熊本病院)

【はじめに】
近年、病院情報システムに蓄積された医療文書について、テキストマイニングや自然言語処理による研究が進められている。医療文書には入院時記録や経過記録、看護記録、退院時サマリなどがあり、それぞれ診療プロセスでの診断や治療、観察に関する事項が記載されている。クリニカルパスは、フリーテキストによって記録される患者状態や診療方針がアウトカムや観察項目として、構造化型式で蓄積されている。今回、アウトカムバリアンスと入院時記録を対象にして、脳梗塞症例の重症患者の分類を行い、特徴因子による推定性能を検証した。
【方法】
急性期病院Aにおける2014年4月から2016年1月の脳梗塞クリニカルパス適用症例(1,222例)を対象とした。12種類のアウトカムバリアンスと入院時記録中の単語群を属性として、検索エンジンを構築した。目的変数は入院時JCS 2桁以上(重症)とした。説明変数として3つのパターン、(A)12種類のアウトカムバリアンス、(B)入院時記録、(C)A+Bを設定し、Support Vector Machineを適用し識別モデルを構築した。スコア上位N個の変数による属性選択を行い得られたモデルについて5分割交差検定で識別性能評価を行った。
【結果・考察】
各推定値についてN=6の場合、A)正答率0.37、F値0.35、B)正答率0.83、F値 0.56、C)正答率0.84、F値 0.63であった。またBとCの性能の推移を比較すると、Cの方が少ない因子から安定した性能の推移であった。Cでは、アウトカムバリアンスが上位スコアに含まれており、それが安定推移に影響していると考えられる。脳梗塞重症患者の特徴因子として、アウトカムバリアンスからは「バイタルサイン安定、呼吸状態安定」が抽出された。
テキストの構造化は解釈や分析精度向上に寄与するため、今後は入院時記録より抽出された特徴語について検証し、クリニカルパスへの導入を検討する。