Japan Association for Medical Informatics

[2-G-2-OP7-3] 地理情報システム(GIS)演習を取り入れた看護情報学の教育方法

小野 保 (岩手看護短期大学)

【目的】看護学生の情報活用力の向上を目的として、保健師養成課程の看護情報学教育で地理情報システム(以下、GIS)の演習を導入した。本稿では、受講生へのアンケートから看護情報学教育におけるGIS演習の教育方法と課題について検討した。
【方法】専攻科地域看護学専攻に在籍する24名を対象に、必修科目の「公衆衛生看護情報学」(1単位15コマ)で、3コマのGIS演習を取り入れた。演習内容は、総務省統計局(e-Stat)の統計GISを使った人口ピラミッドの作成や盛岡駅周辺の小地域の人口分布の可視化と、個人所有のパソコンにインストールしたフリーソフトのMANDARAを使い、大学周辺の小地域の高齢者分布の可視化、並びに複数のデータを重ね合わせて情報を視覚的に表示する演習とした。演習終了後に、演習とGISおよび情報に関する考えについて質問紙で調査した。
【結果】資料を見ながら自分で演習を進められた学生は8.3%で、その他は学生間で教え合ったり教員に質問しながら演習に取り組んでおり、GISの目的や意義は概ね理解されていた。また、約83%の学生がGISで出来ることを理解し、全員がGISにより医療・保健分野で有用な情報が得られると認識しており、GISの操作スキルの必要性も約63%が必要と感じていた。しかし、ソフトウェアの動作不良や操作の困難さなどの理由による演習への支障も見られた。演習の改善点で優先度が高い項目として「演習をサポートするアシスタントの増員」、「演習時間の増加」が挙げられた。
【考察】GIS演習が公衆衛生看護における情報活用力の修得に有効な手段となり得ることが示唆された。一方で、GISの安定した動作環境とゆとりある演習時間、並びにサポート体制の強化の必要性が明らかになった。また、演習成果の定量的な評価方法や、地域診断へのGISの活用など関連科目との連携を考慮した演習の設計も必要である。