一般社団法人 日本医療情報学会

[2-G-3-OP13-1] DWHの標準モデルを指向する医療用Semantic Data ModelのBIに関する有用性の検討

島川 龍載1, 鈴木 英夫2, 津久間 秀彦3, 田中 武志3 (1.広島赤十字・原爆病院, 2.株式会社MoDeL, 3.広島大学病院 医療情報部)

1.背景
 これまでHISのデータを二次利用するために構築されたDWHには、内部構造の標準規格がなかったため、データ抽出や利活用時に多くの問題が発生していた。これらの状況を受けて、一般社団法人SDMコンソーシアムが中心となって、DWHの標準化と効果的な二次利用を目指した医療用SDM(Semantic Data Model)が開発された。今後、データ分析の質向上を図るための新たな標準モデルとして期待されているが、SDMの実業務への適用は端緒に就いたところであり、医療機関での導入効果はまだ十分に検証されていない。
2.目的
 過去の抽出・分析依頼に、現状のSDMがどの程度対応可能か(以下、適合率)を調査する。更に、DWHのスキーマとリレーションと項目を統合的に定義して、一連の処理の自動化を推進したことのBI業務への影響を検討する。
3.方法
 広島赤十字・原爆病院で2014年4月から2017年3月までに医療情報部門に依頼があった抽出・分析依頼を「経営改善/臨床研究/業務改善/医療の質向上」の4つのカテゴリに分類し、SDMの適合率や依頼件数の推移などを調査した。
4.結果
 適合率は、「臨床研究」と「医療の質」が約70%、「業務改善」が約40%、「経営改善」が約30%であった。また、依頼件数はSDM導入後に約30%増加した。
5.考察
 適合率は、高くても70%程度に留まったため全体的に更なる改善が必要だが、業務改善や経営改善では特に意識した取り組みが必要なことがわかった。一方、依頼を処理する分析者は導入前後で2名と変更はないが、分析手順の自動化による医療情報部門の対応力アップを利用者が認識して、「定期的にこのようなデータも出してほしい」といったこれまでなかった要望が増えたことが依頼件数の増加の一因である。
 今後、他のSDM導入病院と連携して更に検証の精度を上げると共に、BIへの有用性を高めるためにアウトプットの指標を意識したSDMの構造化の検討を進めることが必要である。