Japan Association for Medical Informatics

[2-H-1-OP6-3] 地理情報システムによる医療・介護サービスの横断的地域分析

土井 俊祐1, 久保田 健太郎2, 藤原 健太郎3, 井出 博生3, 竹内 公一3, 藤田 伸輔4, 大江 和彦1 (1.東京大学医学部附属病院 企画情報運営部, 2.千葉市 地域包括ケア推進課, 3.千葉大学医学部附属病院 地域医療連携部, 4.千葉大学 予防医学センター)

2025年に向けて国が実現を目指している地域包括ケアシステムでは、住まい・医療・介護・予防などの支援を一体的に提供することが求められている。しかしながら、担当する市町村はその基礎資料となる客観的なデータや、分析のためのノウハウを持ち合わせていないことが多い。そこで本研究では、市町村の担当者と協力し、医療・介護に関わるデータを横断的に取得し、医療・介護施策の基礎資料とするための地域分析を行った。
本研究の対象地域は千葉県千葉市とし、取得したデータは1)後期高齢者医療にかかるレセプトデータ、2)介護保険レセプトデータ、3)介護保険被保険者住所情報、4)介護保険被保険者異動連絡票である。これらのデータを被保険者番号をもとに連結し、医療・介護サービスの利用実績を集計した。分析の単位は区及び郵便番号とし、統計解析に加え、地理情報システム(GIS)を利用することで、より小地域における地理的分析やデータ表現を実現した。
結果として、地域別・サービス別の年齢調整した利用率を算出したところ、例えば在宅医療サービスの利用率では市内6区の間では最大で1.4倍の差(人口千人当たり30.5~43.8)があり、郵便番号間ではさらに大きな差(中央値36.2、四分位範囲26.4~50.6)が生じていた。また、郵便番号別の利用率を地図上に示したところ、在宅医療拠点、施設型介護サービス拠点等、サービス供給地点の周囲で利用率が高い傾向があることが示唆された。
市の調査では、今後10年間の医療・介護需要の伸びを最大で1.5~1.7倍程度と見込んでおり、市内全域での医療・介護提供体制の整備は急務である。その上で、効率性・公平性の観点からサービスの立地計画を考慮する際に、本研究のような分析が有効であると考える。今後の展望として、市町村の需要推計と合わせたサービス提供施設の立地計画や、住民への啓発活動への応用を計画している。