Japan Association for Medical Informatics

[2-H-2-OP8-4] 内部不正許容度と心理的な不正促進要因の関係から医療情報の情報漏えい抑止対策を検討する

伊勢田 司1, 相坂 琢磨2, 大原 達美2 (1.放送大学, 2.東京医科大学)

【目的】 一般の情報漏えい事件に比して、本人の被る被害や社会的反響が大きい医療情報の内部不正による漏えいを防止するために、 内部不正促進要因に対して許容度とどの様な関係があるかを探ることを目的とした。 【方法】 医療情報技師を対象にアンケート調査を用いて、処遇の不満から組織への報復的犯行に及ぶ表出的犯行シナリオと、 金銭など利得を目的とした道具的犯行シナリオの2つの情報漏えいシナリオへの許容度と内部不正促進要因の内、不当解雇と有利な転職の二項目を選択した場合と、 選択しない場合とでは差があるかを検証した。 【結果】 有利な転職を内部不正促進要因であると選択した場合は、選択しない場合に比して要因を含む道具的犯行シナリオの許容度と 表出的犯行シナリオの許容度で差があり、漏えいへの許容がみられた。 一方、不当解雇を内部不正促進要因であると選択した場合でも同様に差がみられたが、表出的犯行シナリオについては、 選択しない場合よりも厳しく、許容できないという結果であった。その際に道具的犯行シナリオについては、選択しない場合に比して許容がみられた。 【考察】 先ず、有利な転職は、労働者自身が選択する行為であり、自への直接的利得であることから、当項目を選択する人は、 内部不正に対しても許容する傾向にあることが認められた。 一方、不当と受け止める様な解雇通告は、本人が望まない事象で、自身の選択ではない。しかし、この不当解雇を内部不正促進要因として選択した人は、 表出的犯行シナリオを選択しなかった人より厳しい態度を示していたことから、調査で用いた表出的犯行シナリオには無い、 より強い報復手段を念頭に置いていたから許容しなかったとも考えられ懸念された。 従って、今後も内部不正犯行シナリオと内部不正促進要因の内容を再検討し、より詳細な具体的例について調査を進めることで、 医療情報の内部不正による漏えい防止に取り組む計画である。