一般社団法人 日本医療情報学会

[2-I-1-JS1-3] 国内における臨床検査値の標準化の動向

堀田 多恵子 (九州大学病院)

【国内における標準化の動向】

臨床検査は患者から採取した血液・尿等から病態を反映する物質を測定することにより臨床に貢献している。しかし同じ対象物質に対して複数の測定原理、試薬、機器が存在し、検査値の互換性確保を困難にしている現実がある。例えば、AST、ALTに代表される酵素活性は基質の種類、温度等の測定条件の違いによって全く異なった値を示してしまうことから、標準化が進んだ。1989年以降、日本臨床化学会(JSCC)より「ヒト血清中の酵素活性測定の勧告法」AST, ALT, CK, ALP, LD,γGT, ChE, AMYが公表された。その後、標準物質が整備され、いまや国内の日常検査の99%以上はJSCC標準化対応法を採用している。標準物質もまた、標準化には不可欠であり、定量測定の精確さの伝達に重要である。標準物質が整備されている臨床化学の20項目の標準化の成果を平成28年度日臨技精度管理調査に見ると、参加した検査室の96%以上は、極めて近似の検査値の報告しており、標準化が検査値を収束させることを示している。

【共用基準範囲(CRIs)の動向】

医療機関の機能分化と連携が進み、検査値の共有が求められている。国内どの医療機関においても継続して病態をモニタリングするためには、1.標準化 2.精確な測定 3.適切な基準範囲を要す。しかし、標準化した精確な測定により検査値が極めて近似しているにも拘わらず、基準範囲は検査室毎に様々である。CRIsはこれを解消するために2014年に公開された。現在の採用率は5%~10%であり、普及を加速させる必要がある。派生の医学教育用基準範囲(案)についても言及したい。

【今後の標準化の動向】

臨床検査値の2次利用が要望されている。今後、ニーズの高い項目の標準化・外部精度管理の整備、加えてCRIsの項目拡大が必要だと考える。