Japan Association for Medical Informatics

[2-J-3-OP14-4] 生活習慣病患者のPHR利用意向に関する調査

平野 良真1, 山口 聡子2, 脇 嘉代2,3, 児玉 和代2, 湯浅 薫2, 木村 滋子2, 木村 慶彦1, 川原 善紀1, 陳 惠一1, 南谷 泰仁4, 南学 正臣5, 門脇 孝3, 大江 和彦6 (1.日本調剤株式会社, 2.東京大学大学院医学系研究科健康空間情報学講座, 3.東京大学医学部附属病院糖尿病・代謝内科, 4.京都大学医学部腫瘍生物学講座, 5.東京大学医学部附属病院腎臓・内分泌内科, 6.東京大学大学院医学系研究科社会医学専攻医療情報学分野)

【目的】PHR:Personal Health Recordは個人の健康・医療・介護情報を管理・活用できる情報連携の仕組みであり、PHRの利活用は生活習慣病の改善、重症化予防に役立つと期待されている。そこで本研究は今後のシステム開発に生かす情報を得ることを目的とし、生活習慣病患者におけるPHR利用意向、健康管理に関する意識などを調査した。
【方法】日本調剤株式会社の神奈川県内の薬局84店舗の利用者のうち、高血圧治療剤、脂質異常症治療剤、糖尿病治療剤の少なくとも1剤を処方されている20歳以上の患者を対象に既往疾患、自身の健康管理に関する意識、PHRの利用状況や利用意向などに関するアンケートを行った。2017年2月6日から3月3日までの調査期間内に来局予定の対象者から予め無作為に選択した患者にアンケート記入を依頼し、文書による同意を取得した。
【結果】参加基準を満たす対象者3,717名のうち、アンケートの回収は2,308名(62.1%)であった。回答者の属性は女性43.7%、60歳以上70.9%であった。PHRの利用経験は7.5%、利用意向率は37.0%であった。単変量解析でPHR利用意向の有無と有意な関連をみとめた項目は、性別、年齢、定職の有無、生活習慣の改善に対する意欲、服薬アドヒアランス、疾患に関する情報の入手先、疾患への理解、情報端末の有無、PHR利用経験などであった。一方、PHRの利用に否定的な理由としては「手間が増える」(38.9%)ことへの懸念や「必要性を感じない」(34.8%)などが挙げられた。
【考察】生活習慣病の治療には生活習慣改善や服薬アドヒアランスの向上が重要であり、自己管理をサポートするPHR利用による効果が期待できる。PHR利用意向および利用を妨げる障害の解析は、より有用なPHRの開発に役立ち、生活習慣病治療や重症化予防への手助けになると考えている。