Japan Association for Medical Informatics

[2-L-1-PP2-2] プライバシー保護のために一部非表示にした画面表示方法に対する医療従事者の評価

新實 夕香理1, 太田 勝正2, 曽根 千賀子3 (1.聖隷クリストファー大学, 2.名古屋大学医学系研究科, 3.長野県看護大学)

【目的】プライバシーは患者の尊厳を構成する重要な要素の一つであるが、自己情報コントロール権に基づく電子カルテ画面の表示法に関する研究はまだほとんどない。先行研究で私たちは一時的なモザイクを適用することにより、患者のプライバシーを保護するための表示方法を考案した。この表示方法の医療従事者の受け入れ可能性を探ることが本研究の目的である。
【方法】日常的に電子カルテを利用している医師、看護師、薬剤師、診療放射線技師、理学療法士等を対象に質問紙調査を実施した。質問用紙の冒頭に、患者が知られたくないと回答した情報の一部にモザイクをかけることによって情報を保護し、医療従事者がカルテ画面を開いた時にその情報が一時的に見えないようにした模擬画面を提示し、それを理解した上で回答するように作成した。調査内容は、基本属性および部分的に非表示にするシステム(開発中)への意見・評価である。調査期間は2016年11月~2017年3月までである。倫理委員会の承認を得てから調査を実施した。
【結果・考察】質問紙回収数は436件(回収率42.9%)であった。16の職種から回答が得られ、看護師が7割、臨床経験10~20年未満が3割、電子カルテ利用歴5~10年未満が4割であった。本表示法がプライバシー保護に役立つかを尋ねたところ、「役立つと思う」および「やや役立つと思う」への回答は251名(57.6%)であった。22の個人情報について、「日常業務の安全を考慮した上で非表示にするのが可能な情報」を尋ねたところ、同意率の高い順に「学歴」371名(85.1%)、「収入・家計上の問題」328名(75.2%)、「職業」284名(65.1%)であった。さらに、22の個人情報についてチーム医療連携の効率性を考慮した場合においても尋ねているが、同様の結果であった。医療従事者は一時的な非表示の方法であっても特に社会的背景を示す情報項目は非表示による保護を受け入れられることが示された。
本研究はJSPS科研費JP26463224の助成を受けた。