Japan Association for Medical Informatics

[3-B-3-OP21-1] 電子カルテ導入率の地域差とその形成要因について

川口 英明1, 小池 創一2, 大江 和彦1 (1.東京大学大学院医療情報学分野, 2.自治医科大学地域医療学センター地域医療政策部門)

【目的】日本の電子カルテ導入率は、全体でみると徐々に上昇しているが、導入率の地理的な差異については、十分に検討されていない。本研究では、既存の統計データを用いて、日本の電子カルテの導入率の地域差とその形成要因について検討を行う。

【方法】公開されている医療施設静態調査データを用いて、2008年と2014年における各二次医療圏の病院及び診療所の電子カルテ導入率を比較した。導入率の不均衡度の検討にはジニ係数を、地理的な集積性の評価には、モランI統計量を用いた。各時点において、条件付き自己回帰モデルを用い、電子カルテ導入率に関連する因子について分析した。

【結果】2008年から2014年にかけて、平均的に電子カルテ導入率は上昇しており、また、ジニ係数は病院・診療所共に低下しており、導入率の不均衡度は低下していた。一方で、2008年から2014年にかけて、病院・診療所共に、モランI統計量は上昇しており、地理的な集積性は上昇していた。電子カルテ導入率と有意に関連していた因子は、診療所では二次医療圏の平均収入が挙げられたが、病院では関連性は認められなかった。また、病院については、病院勤務医師に対する病院開設者の割合が多い二次医療圏では導入率が低く、診療所については、診療所勤務医師が多い二次医療圏で導入率が低かった。これらの関連性は、2008年、2014年で共通して認められた。

【考察】2008年から2014年にかけて電子カルテ導入率は上昇しているが、積極的に導入している地域とそうではない地域の集積が存在し、集積性は増大していた。自然に地域差が解消されるとは考えにくく、地域差解消のための政策介入が必要であると考えられた。特に、病院と診療所で、導入率と関連する因子が異なっていたことから、導入率の地域差解消のためには、病院と診療所で異なったアプローチをとる必要性が示唆された。