Japan Association for Medical Informatics

[3-B-3-OP21-3] 人口構造の変化を考慮したDemand-based approachによる医療需給の将来予測
―北海道の救急医療を対象として―

石川 智基1, 藤原 健祐2, 鈴木 哲平1, 辻 真太郎1, 小笠原 克彦1 (1.北海道大学大学院保健科学研究院, 2.北海道大学大学院保健科学院)

背景
北海道は、将来の人口減少だけでなく、都市部への人口集中と高齢化、さらに医師の不足と地域偏在が指摘されているため、人的資源管理の観点から需給を検討した医療計画の立案が重要である。しかし、北海道において人口構造の変化が将来の医療需給に与える影響についての研究はあまり行われていない。本研究は医療計画立案の支援を目的とし、人的資源管理の視点から、人口構造の変化が需給状態に与える影響の将来予測を行った。

方法
分析地域単位を北海道の二次医療圏とし、2015年、2025年、2035年を対象年度とした。救急医療体制の観点から、脳卒中・急性心筋梗塞を対象とし、各医療圏における専門医数を人的資源の指標とした。Demand-based approachでは受療率から患者数予測を行うため、国立社会保障・人工研究問題所による人口予測と疾患別受療率から将来患者数を二次医療圏別に算出した。さらに、患者集中度を評価するためHerfindahl-Hirschman Index(HHI:ハーフィンダール・ハーシュマン指数)を、不平等性評価の指標として医師数のジニ係数を算出し評価した。また、全疾患の医療需給との比較を行うために、北海道の全臨床医師数と全患者数においても同様の分析を行った。

結果・考察
HHIは2015年から10年おきに、脳卒中で0.176、0.206、0.236、心筋梗塞で0.180、0.210、0.238、全患者数で0.198、0.221、0.246と増加した。この結果から、将来的に一部地域への患者集中が進行していくと考えられる。一方、ジニ係数は、脳卒中で0.284、0.241、0.218、心筋梗塞で0.263、0.234、0.213、全患者で0.166、0.140、0.117と偏在は縮小傾向にあるが、脳卒中・急性心筋梗塞は医療全体と比較すると、偏在が大きい領域であることが明らかになった。