Japan Association for Medical Informatics

[3-C-1-PS6-4] 多機関分散データ統合活用技術による生活安全:学校事故データを用いた検証

西田 佳史, 北村 光司 (国立研究開発法人 産業技術総合研究所)

子ども、高齢者、障がい者などの生活機能変化者に対する生活安全が強く求められている。本研究では、セキュリティ基盤技術を活用した多機関分散データの利活用技術を、データ保有機関である医療機関等やデータ活用者である製品デザイン等の現場と連携し実証的に開発することを目的としている。これまでに、消防庁、日本スポーツ振興センター、複数の医療機関、保育所・小中学校などと連携し、分散された傷害関連データを統合的に活用する技術の開発を進めている。
具体的な応用分野の一つとして、学校安全を取り上げ、実証を進めている。昨今の学校安全に対する関心の高まりから、複数の小学校に分散する事故データを、学校を特定されない方法で、仮想的に統合することでビッグデータ化し、これに基づいた統計解析を行うことで、起こりうる重傷事故を予測したり、対策が必要となる重症事故を見つけ出すニーズが高まっており、これに対応するためにセキュリティに配慮しながら、医療費などのKPI付きビッグデータを作成し、重症となる事故要因を分析する技術(重症度クリフ分析技術)を開発した。
クリフ分析の概要を述べる。学校において、安全担当の教師などが入力した条件に合致する傷害データを複数の小学校から取得し統合する。得られた傷害データの事故状況記述データを対象にテキストマイニングを行い、事故状況を表すのに重要な単語を抽出する。重要な単語を特徴量として、クラスタ分析を行い、事故状況を分類する。医療費を重症度の指標として、重症度の変化点を見つけ出し、類似事故状況における重症事故群と軽傷事故群に分類して、それぞれの特徴を把握する。
また、本CREST(ビッグデータ統合利活用促進のためのセキュリティ基盤技術の体系化)で連携している大阪大学らが開発したプライバシを保護したデータ集合演算技術(PSI)と統合することで、セキュリティに配慮したクリフ分析が利用可能なシステムを開発した。