Japan Association for Medical Informatics

[3-C-3-OP22-5] MID-NETを用いた急性心筋梗塞の検索精度に関する検討

井上 隆輔1, 大友 千晶1, 中山 雅晴1,2 (1.東北大学病院メディカルITセンター, 2.東北大学大学院医学系研究科医学情報学分野)

【目的】医療情報データベース基盤事業において、東北大学病院に導入された医療情報データベース(以下MID-NET)を用いて、薬剤疫学研究等を実施する際に適切な対象者の抽出が可能となるよう、抽出条件定義の妥当性を確認することを目的として、データ検証を行った。

【方法】MID-NETでは、簡易プログラム(スクリプト)を用いて、データ抽出の条件を設定する。本研究では、アウトカムとして、急性心筋梗塞(AMI)を定義し、MID-NETから抽出するためのスクリプトを用意した。病名に基づいて設定したスクリプトを包括スクリプトと、包括スクリプトに検査や治療等の条件を加えた個別スクリプトを実行した。スクリプトによりMID-NETから抽出された該当者について、診療録を確認することにより、真のケースとそれ以外のケースに判定し、その結果を基に陽性的中度(PPV)を算出した。抽出された対象者は、universal definitionに基づいて真のAMIと判定された例(A)、universal definitionを満たさないが、専門医が真のAMIと判断した例(B)、AMIではない例(C)に分類された。

【結果】包括スクリプトにより285例が抽出され、149件がA、11件がB、125件がCに判定された。真のケースをAのみとした場合のPPVは52.3%、AおよびBとした場合のPPVは56.1%であった。その他のケースとなった例は、循環器科以外の患者で、心筋梗塞の既往があり、抗凝固薬や抗血小板薬を投与されている患者にAMIの病名が付けられている例が多かった。
検索条件に検査値異常と治療行為を含む個別スクリプトでPPVが97%以上と特に高かった。ただし、抽出件数が109件と少なかった。また、検索条件に検査値異常を含む個別スクリプトでは144件と比較的多くの例が抽出され、PPVも90%以上であった。

【結論】正しい病名が付けられていた例は50%程度であった。検索条件に検査値異常を加えると、PPVが高く、症例数も多く抽出された。成績のよい個別スクリプトをブラッシュアップする、もしくは別要素を加えることで、正確性が担保され、かつ症例数を多くカバーする可能性が示唆された。