Japan Association for Medical Informatics

[3-F-1-OP16-7] 描画試験から得られるストロークデータを用いた認知症進行度評価法に関する一検討

川西 昂弥1, 川中 普晴1, 高瀬 治彦1, 鶴岡 信治1, 高松 大輔2 (1.国立大学法人三重大学大学院, 2.社会福祉法人 太陽の里)

[背景]近年,認知症高齢者は増加しており,認知症の早期発見とその予防は老年医学や社会福祉学の観点からも重要な課題である.認知症の評価にはHDS-Rや(MMSE),時計描画試験などが用いられるが,これら評価試験は評価者である施設職員や医師の経験に依るところが大きい.加えて,被験者の性格や認知症進行度によっては,指定した図形を描くことができない,被験者がテストそのものを拒否するケースも少なくない.継続的な認知症評価には,様々な描画内容に適用可能な評価方法が必要不可欠である.

[目的]本研究では,認知症高齢者によって描かれた様々な描画データから認知症の進行度を評価するための方法について検討した.簡単な図形を描いた際に得られる時系列データから,認知症の進行度評価法のための特徴を抽出方法を提案し,その認知症評価への可能性について検討した.

[方法]タブレット端末を用いて描画の際の座標や筆圧,ペンの角度を収集できるシステムを開発した.開発したシステムを用いて時計描画試験や計算問題などを実施し,その際に描いた数字のストロークデータを取得した.得られた描画データから座標の変化量と筆圧,ペンの傾きの時系列データを抽出して正規化し,Variational Autoencoder (VAE)を用いて確率分布を生成した.

[結果]英国Cardiff大学より提供された健常者データ831例(55名)と県内の介護施設で収集した認知症データ370例(8名)を材料として用いた.本稿では,認知症患者の描画データを大量に収集することは困難であったため,第一段階として健常者データの確率分布を構築し,異常値検出法を用いて認知症検出の可能性について検討した.描画データから認知症の進行度を評価できる可能性が見出された.現在,実験結果の詳細について検討を進めている段階であり,最終原稿にてその詳細を記す.