Japan Association for Medical Informatics

[3-F-3-OP24-6] イベント関連生体監視情報抽出を可能にするDWH開発と周術期医療の質の可視化

長瀬 清1, 紀ノ定 保臣2 (1.岐阜大学医学部附属病院手術部, 2.岐阜大学医学部附属病院医療情報部)

(背景)常時劇的に変化する急性期医療において、生体監視情報は医学的判断の根拠であり、患者生命の安全確保から周術期医療の質評価にまで及ぶ重大な関心事である。また生体監視情報は手術や麻酔時の様々なイベントから影響を受けるため、これらの応答や相互の関連を明らかにすることは長年にわたる各種学問上のテーマであった。本研究では、急性期医療で発生する膨大な時系列の生体監視データを対象に、イベント・ドリブンのデータ管理や時系列データ処理を可能とする新しいDWHを開発したので、その構成・運用と急性期医療における新たな知見の成果を報告する。

(方法)気道確保や手術開始等を起点として、この前後分単位の相対時間における任意の生体監視データを保存・管理・抽出することが可能な新たな視点からのDWH:Dataware House (ViProsTM)を手術部門システムと併用開発した。またこのViProsTMは、術前・術後を管理する看護部門システム(NASIST)と連携することで、術中だけでなく周術期を通して血圧、心拍数、体温等の時間的な推移を可視化できるようにした。またDWH操作画面ではSQLの知識を必要とせず、急性期医療に知見を備える医療スタッフであれば直感的に操作できるインターフェイスとした。倫理審査委員会承認後に、ViProsTM を用いて2004年以降に当院で手術を受けた成人非人工心肺全身麻酔手術患者31,969名を対象に検討した。

(結果)麻酔導入時における心拍数と血圧上昇は2010年以降劇的に抑制され、麻酔の質と医療安全の向上が明らかになった。周術期の体温推移では、手術開始後の体温再分布の抑制と、術中と手術終了後の加温の効率化が明らかになり、術後シバリングの抑制に貢献していた。また体温再分布や体温上昇に伴う要因分析も可能になり、従前の麻酔学や外科学の教科書にも掲載されていなかった周術期の体温推移とその因子が明らかになった。

(まとめ)急性期医療の本質である侵襲を受け常時変化する患者生体の応答結果を一括管理できるDWHの開発により、従来暗黙知とされた様々な知見を明らかにすることができた。ViProsTMにより急性期医療の可視化だけでなく医療の質向上への具体的な提案が可能になると考えられた。