Japan Association for Medical Informatics

[3-H-3-OP20-2] ICD-11改訂作業の現状分析と構造変更に関する一考察

滝澤 雅美1, 小川 俊夫2, 及川 恵美子3, 新畑 覚也3, 中山 佳保里3, 森 桂3, 田嶼 尚子4, 今村 知明5 (1.国際医療福祉大学, 2.国際医療福祉大学大学院, 3.厚生労働省政策統括官付参事官付国際分類情報管理室, 4.東京慈恵会医科大学, 5.奈良県立医科大学公衆衛生学講座)

【背景と目的】ICD-11改訂作業は、2018年の公表に向けて大詰めを迎えている。2016年10月にはICD-11-MMSと呼ばれる評価版(以下、ICD-11評価版)が纏められ、2017年4月にはその修正版(以下、ICD-11修正版)が発表された。本研究では、本改訂作業におけるICD-10から11への構造の変更過程を概観し、ICDの構造変更がわが国の医療行政等に与える影響について考察する。
【方法】ICD-11評価版および修正版の構造をICD-10と比較するため、中分類単位で大幅な変更が行われた箇所を抽出し、その内容と背景因子について、WHO発出資料や関連論文等から取り纏めた。
【結果】本研究の分析対象として、糖尿病、脳血管疾患、認知症を抽出した。糖尿病は、ICD-10では3大合併症を含めて同じ章に分類されていたが、ICD-11評価版及び修正版では3大合併症が他の章に分類された。脳血管疾患は、ICD-10及びICD-11評価版で「循環器系の疾患」に属していたが、ICD-11修正版では「神経系の疾患」に分類された。認知症は、ICD-10では「精神及び行動の障害」に属していたが、ICD-11評価版では「神経系の疾患」に、修正版では「精神,行動又は神経発達の障害」に分類された。
【考察】ICD-10から11への改訂のポイントは、ICD-10の問題点の解決、臨床的視点を考慮、全体的な統一性の確保である。本研究で抽出した大幅な変更は、関連学会等からの要望をうけ疫学的・医学的エビデンスを基に長い論議を重ねた上でWHOにより決定された。しかし、現行の分類と大きく異なる疾患については、わが国の政策立案や医療保険制度への影響も考える必要がある。今後ともICD-11改訂の動向を注視し、わが国にとって実用的でかつ国際的にも受け入れられる分類の構築をWHOに対して提案することが重要である。