Japan Association for Medical Informatics

[3-J-1-OP18-4] 多変量解析を用いた看護職の労働環境が看護業務についての自己評価に及ぼす影響の研究

東出 雄二 (東京医科歯科大学大学院)

【緒言】1994年から2013年の推移ではこれまでの離職対策では看護職の離職率の低減は認められなかった。看護職の離職には、労働環境要因などの外的因子と個々の看護職の看護業務や労働環境に対する捉え方を含む内的因子が関与している。本研究は内的因子に着目し個々の看護職の看護業務や労働状況に対する捉え方の違いによる離職行動の説明の可能性を確認した。
【方法】日本医療労働組合連合会の協力を得て33,212件のデータを分析した。看護業務についての自己評価項目間の相関の程度をPearsonの相関係数で検討し、主成分分析で主成分を抽出した。上位3個の主成分を意味付けし、病床区分と年齢区分による主成分の有意なばらつきをWelchの分散分析で確認した。データ量が多くp値だけではなく効果量(d値)で高低差を検証した。主成分得点を目的変数とし労働環境項目を説明変数として重回帰分析を行い、自由度調整済み重決定係数で労働環境が主成分に与える寄与の程度とt値で個々の労働環境の関与の程度を評価した。
【結果】3個の主成分は看護職の意識の程度を表しており、第1主成分を「仕事を辞めたい度」(P1)、第2主成分を「十分な看護ができている度」(P2)、第3主成分を「看護にやりがいがあると感じる度」(P3)と命名した。分散分析の結果、P1、P2、P3でばらつきが病床区分と年齢区分で認められた。労働環境項目はP1に影響を与えているが、P2とP3には限定的な関与しかないことが明らかになった。
【考察】病床と年齢区分で離職意図の平均値にばらつきがあり、同一の離職対策では効果がない。十分な看護の提供および仕事に対するやりがいは労働環境要因より個人に依存する要因が大きいと考えられる。離職意図は、服薬の有無、仕事量の増加、パワハラに強い影響を受けており、看護業務に対するやりがいの増大が離職率を低減させる可能性があることが確認された。