Japan Association for Medical Informatics

[3-L-1-PP6-1] 病態・疾患特定のためのアウトカム定義(phenotyping)調査研究

伊豆倉 理江子1, 山下 貴範1, 野尻 千夏2, 高田 敦史1, 野原 康伸1, 中島 直樹1 (1.九州大学病院 メディカル・インフォメーションセンター, 2.株式会社 ケア・フォー)

【はじめに】Real World Dataである電子カルテ情報やレセプト情報、健診情報などを用いて、病名や病態を抽出する「Phenotyping」が試みられ、米国ではHuman Phenotype OntologyやPhenotype Knowledge baseに集約されている。我が国では、特に薬剤疫学の分野において医薬品曝露による副作用の発現「アウトカム」を大量の症例から特定するためのPhenotyping(=「アウトカム定義」)活動が、AMEDやMIHARI Project、医療情報データベース基盤整備事業(MID-NET)などで進んでいる。特にMID-NETでは、平成30年度から製薬会社や研究機関などの利用が開始されるため、その整備は急務である。今回、AMED中島直樹班において、MID-NETでの利活用推進を主目的とし、各研究のアウトカム定義を調査・整理したので報告する。
【方法】MIHARIやMID-NET事業、AMED及び医療情報学連合大会の演題項目の中でphenotypingに関する研究から、一定の疾患や病態に対するアウトカム定義を収集・整理した。
【結果と考察】収集したアウトカム定義は計27個で 、うち疾患の発現症例を抽出する定義が20件、特定の医薬品の副作用発現症例を抽出する定義が7件で、病態別では代謝・内分泌系が最も多かった。今回の整理により、急性腎不全や無顆粒球症のような検査値の異常や変動が(ほぼ)直接傷病名となっている疾患では検査値単独の定義で陽性的中率(PPV)が100%近くなる一方で、PPVが極めて低い定義の存在も判明し、これは疾患特性あるいは診断方法に依存することがわかった。今後はAMED宇山佳明班などでこれらのアウトカム定義の検討に機械学習を用いるなど工夫し、さらに多くの疾患・病態に対するアウトカム定義を整備して、精緻化していく必要がある。これらは、MID-NET利用者の抽出スクリプトの基礎的資料となり、抽出データの信頼性確保にも重要であると同時に、他DB事業でのphenotypingの重要な資料となる。