一般社団法人 日本医療情報学会

[3-L-2-PP7-1] 定期健康診断に使用される問診票についての検討

安藤 肇1, 池上 和範1, 菅野 良介1, 道井 聡史1, 白坂 泰樹1, 大神 明1, 只野 祐2 (1.産業医科大学 作業関連疾患予防学研究室, 2.公益社団法人 全国労働衛生団体連合会)

【背景・目的】
本邦では労働安全衛生法に基づき、労働者に対して定期健康診断を行うことが義務付けられている。その項目については労働安全衛生規則に規定されているものの、特定健康診査のような標準的な問診票は示されておらず、各健診機関において独自に作成されているのが現状である。定期健康診断の目的は単に病気を早期発見するだけではなく、産業医が就業適性を判定する基礎資料として使用することが意図されている。産業医が就業適性を判定する上では問診票より得られる情報が重要であることから、今回全国で使用されている問診票の現状を明らかにし、問題点を検討することを目的に研究を実施した。
【方法】
全国の企業外労働衛生機関より問診票(未記入のもの)を入手した。入手に当たっては公益社団法人全国労働衛生団体連合会の協力を得た。収集された問診票について、項目の有無や選択肢の内容などを集計した。
【結果】
全国70健診機関より問診票を入手した。うち、同一グループ内で重複したケースを除外し、64問診票について解析を行った。全ての問診票に共通する質問項目は存在しなかった。主要な項目については自他覚症状 61、既往歴 62、家族歴 26、業務歴 26であった。特定健康診査に関わる問診項目については61問診票において含まれており、うち55問診票においては厚生労働省による標準的な問診票が改変なく使用されていた。
【考察】
標準的な問診票がないため、問診項目については差異が大きいことが明らかとなった。中には特定健康診査の標準問診票のみという健診機関も見受けられた。業務歴については法定項目であるが聴取率が低く、就業判定に用いるという労働安全衛生法における健康診断の意義が十分に理解されていないことが示唆された。今後、雇用の流動化に伴い生涯で複数の健診機関を受診するケースは増えると考えられ、個人の健康記録を統一して管理していくためにも標準的な問診票の作成が望まれる。