Japan Association for Medical Informatics

[3-L-2-PP8-2] 脳卒中教育アプリケーションを活用したFAST啓発対象学年の検討

谷 昇子1, 奈良﨑 大士2,3, 山下 尚子2, 西村 治彦3, 横田 千晶2, 平松 治彦2, 峰松 一夫2 (1.京都大学大学院 医学教育・国際化推進センター, 2.国立循環器病研究センター, 3.兵庫県立大学大学院 応用情報科学研究科)

【背景】脳卒中の早期発見・早期治療のためには、脳卒中の知識を多くの人々に普及する必要があり、脳卒中発症に素早く気づき対処することは、脳卒中転帰改善に不可欠である。先行研究より、10代を対象に開発した啓発教材(マンガ冊子等)の配布のみでも、生徒と保護者の双方で、脳卒中知識の啓発効果を得られることが明らかとなった。併せて開発した教育アプリケーション(以下、アプリ)の検証では、小学校低学年(1~3年生)と高学年(4~6年生)の比較により、高学年への啓発効果の可能性が示唆された一方、低学年の最高学年(3年生)に対して、高学年と同様の啓発効果が期待できるかどうかは検討の余地がある。
【目的・方法】本稿では、アプリを活用した脳卒中知識の啓発対象学年を検討する。アプリは脳卒中の典型的な3つの症状である顔のゆがみ(Face)、片腕の脱力(Arm)、言葉の障害(Speech)と、発症時刻(Time)を組み合わせた啓発メッセージ(FAST:顔、腕、言葉のうち1症状でもあれば、時間を確認して救急車を呼ぶ)を印象づける構成とした。2015年に開催された国循科学医療フェスタにて、脳卒中の解説→ゲーム→FASTクイズの順でアプリに挑戦した参加者の基本情報(学年等)とFASTクイズの回答データから、小学生の有効件数158名分を学年別に集計した。
【結果・考察】FASTクイズの全問正解率(正解者数)が2年生(n=28)では35.7%(10名)であった一方、3年生(n=45)では77.8%(35名)と顕著に増加し、4年生(n=50)では100%(50名全員)となった。3年生でも8割近くがFASTクイズに全問正解したことから、ゲームとの組み合わせによりFASTを正しく理解できる可能性があり、アプリを活用した脳卒中知識の啓発対象学年に3年生まで含めることは、普及推進の有効手段となるかもしれない。