Japan Association for Medical Informatics

[3-L-2-PP8-5] 仮想微生物を想定した生物行動アプリケーションの開発

張 洪健, 小笠原 克彦 (北海道大学大学院保健科学院)

「背景」生物や生体においては、遺伝やホルモンだけではなく環境などの影響によりさまざまな行動パターンや反応パターンを示すが、これらの複雑な行動や反応を経時的に観測することは難しいのが現状である。近年、コンピュータの能力が飛躍的に向上したことから、数理生物学やシステム生理学での研究が進み、以前はできなかったような計算やシミュレーションが可能となりつつある。そこで、我々は将来の生体情報モデルの構築に向けた第一歩として、仮想的な微生物を想定した微生物行動シミュレーションアプリケーションの開発を試みた。
「方法」本アプリでは、仮想微生物の行動進化と運動性を考慮し、飼育箱を999×999ピクセル、原虫を3×3ピクセル、餌を1×1ピクセルと定義した。仮想微生物の移動を前、左前、右前、左後、右後、後の6方向とし、その方向は遺伝子確率によって決定した。また、全ての仮想微生物が1ピクセルずつ移動するのを1サイクルと定義し、1サイクル毎に成熟度を上昇させた。また、仮想微生物のエネルギーを単位として定義し、餌を得ると350単位増、1ピクセル移動すると1単位減、分裂するなど単位数が半分となるとした。また、分裂条件は成熟度が600以上およびエネルギーが750単位以上とした。シミュレーションは仮想微生物が全て死ぬ場合、16384サイクル終了時(2^14)、または仮想微生物の数が300になった場合にシミュレーションが終了するとした。
「結果・考察」シミュレーション結果の一例を示す。シミュレーションではランダムに飼育箱に10匹の仮想微生物を入れ、飼育箱の全範囲にランダムに550個の餌を配置した場合、1823サイクルで半数が死滅し、16384回サイクル終了時では、仮想微生物が1匹生き残った。本アプリにより原虫の移動と分裂の経過を可視化するとともに、することが可能であった。今後、実際の微生物により行動確率を計測し、本アプリに導入したいと考えている。