Japan Association for Medical Informatics

[3-L-3-PP10-4] ヒートパイプを用いた透析液廃熱利用システムの開発

兼信 尚生1,2, 山本 益士2, 西村 治彦1 (1.公立大学法人兵庫県立大学大学院応用情報科学研究科, 2.学校法人大阪滋慶学園大阪ハイテクノロジー専門学校)

血液透析治療とは腎不全などの患者へ行なう治療の一つである。腎機能を人工的に代行し、血液内の不要な物資の除去および不足している成分の補足を同時におこなう。血液透析治療においては120リットルほどの大量の水をもとにして透析液を作成する必要があるうえ、患者の体温に合わせて加温しなければならない。このように大量の透析液を加温する際には大きな電力を必要とするが、血液透析治療に利用した後の透析液はそのまま廃液として処理されている。この廃液の持つ熱を血液透析治療前の透析液に供給することで加温に必要な電力を削減できることが期待できる。本研究では熱伝導効率の非常に高いヒートパイプを用いることで、廃液として捨てられる熱を供給液側へ移動させるシステムの構築および評価をおこなうこととした。システムの構成として温度測定回路とヒートパイプをもちいた。温度測定用のセンサとしてサーミスタをもちいて温度計を作製した。制御用のマイコンであるArduinoを接続しPC上に出力する。この温度計は分解能0.1℃以内で測定できる。また廃液の熱を供給液側へ熱伝導させる媒体としてヒートパイプをもちいた。ヒートパイプとは気化熱・凝縮熱を利用することで金属の100倍以上の熱移動効率を持つ中空型のパイプである。今回は大きさの異なるU字形のヒートパイプを3本1組として2組使用した。透析用監視装置は日機装社製DCS-73を、給液は水道水をもちいることとした。温度測定箇所はバケツ内、給液、廃液、室温とした。測定間隔は1分とし、2時間測定することとした。また熱交換器通過前後の温度は透析用監視装置のモニタにて測定した。研究結果として給液側の液温が5℃上昇したことを確認した。血液透析治療において利用されることのなかった廃熱を利用し電力削減手法への取組み活動をおこなった。理論上は一般的な治療条件において電気代を約12,000円/年削減できる見込みである。