Japan Association for Medical Informatics

[3-L-4-PP12-5] ベイジアンネットワークを用いた豪雪地域住民の下肢筋力と生活習慣に関する因果関係の可視化

鈴木 哲平1, 下田 智子1, 寒川 美奈1, 榎本 尚司2, 永井 亘2, 黄瀬 信之2, 森山 広行3, 後藤 輝明4, 小笠原 克彦1 (1.北海道大学大学院保健科学研究院, 2.岩見沢市, 3.株式会社はまなすインフォメーション, 4.株式会社ツルハホールディングス)

背景および目的
高齢者では下肢筋力低下による転倒頻度が多く、転倒後の骨折は寝たきり発生の原因となる。特に寒冷・豪雪地域においては、冬場の運動機会の低下や、雪道による転倒リスク上昇の為、自治体として対策に取り組む必要がある。しかし、下肢筋力の状態は生活習慣や食習慣等、様々な要因に影響を受ける事から、効果的な対策を実施するためには、各要因間の因果関係を明らかにした上で検討を行う必要がある。そこで本研究では、豪雪地域を対象とした、下肢筋力低下の予防・改善の行政施策を支援する手法の提案を目的として、健康状態や生活習慣等の調査結果をもとに、下肢筋力と各要因との因果関係の可視化を行った。
【方法】
2016年1月から2017年3月までに北海道岩見沢市で実施した「お手軽健康チェック」参加者492人を対象に、生活・運動習慣に関する質問票、簡易型自記式食事歴法質問票の実施と、体組成、下肢筋力等の測定を行った。得られた結果からベイジアンネットワークモデルを構築し、各要因間の因果関係を事後確率として算出した。また、得られた事後確率を変化させて、下肢筋力の改善に向けた取り組みとその期待される効果について検討を行った。
【結果及び考察】
65歳以上では、下肢筋力のバランス機能に影響を与えている要因は運動習慣であることが明らかになった。また、対象者全員の下肢筋力が改善することによって、必要量以上のエネルギーを摂取する割合が27.49%改善する事が示唆された。65歳未満では下肢筋力に影響を与えている要因を明らかにすることは出来なかったが、下肢筋力がBMIや運動習慣、炭水化物摂取量に影響を与えることが明らかになった。この結果から、65歳未満の場合は下肢筋力の改善が見られた後、運動習慣が定着していくという行動変容パターンが存在することが示唆され、対象者全員の運動習慣が定着するために、バランス機能が高い割合を16.79%増加させる必要があることが示唆された。