一般社団法人 日本医療情報学会

[4-A-2-JS10-2] 画像認識技術の医療への応用

野里 博和 (産業技術総合研究所 人工知能研究センター)

近年、医療分野のIT化により、膨大な診療データが日々取得されているが、蓄積されたデータを解析し、医師や患者が利用できる情報に変換して活用する診断は実現できていない。質の高い医療は医師の経験と知識に依存するところが大きいため、蓄積されたデータを活かした診断支援により経験や知識を補うことで、医療の質の向上に貢献することが期待できる。
現在、人工知能技術が再注目され、機械学習を中心に膨大な情報の中から有用な情報を抽出する技術の実用化が進み、囲碁や将棋から顔認識や運転アシストまで幅広い分野での活用事例が報告されている。医療分野においても人工知能技術への期待は高く、診療・治療支援に加え、ゲノム医療から医薬品開発に至るまで、関係するほとんどの領域において人工知能技術を活用した取り組みが開始されている。画像診断領域においては、日本病理学会が病理組織デジタル画像の収集基盤を構築し、人工知能を活用した病理診断ツールを開発する研究事業を開始するなど、学会を中心とした画像データベース構築も行われ、多くの研究開発が行われている。
そこで本発表では、産総研人工知能研究センターで取り組んでいる医療分野での人工知能技術の応用研究事例を中心に画像認識技術の医療への応用について概観し、今後、人工知能技術によってどのような発展が期待できるかについて紹介する。産総研では、蓄積された診断済みの画像データを人工知能技術で学習することで、学習に基づいた識別基準を構築し、診断支援する技術の研究開発を行っている。産総研独自の画像認識技術に基づいて、病理検査、超音波検査、内視鏡検査、MRI検査などの検査画像の幾何学的な性質を表す特徴量の抽出と解析により、病変の重症度や部位の自動検出を行っている。