Japan Association for Medical Informatics

[4-C-1-PS15-3] 平成29年度地域医療基盤開発推進研究事業 遠隔診療に関する有効性・安全性に関するエビデンスの飛躍的な創出を可能とする方策に関する研究から見た課題整理

佐藤 大介 (国立保健医療科学院)

背景
近年、医療情報学の学術的発展と医療ICTの技術的発展により、いわゆる「遠隔診療」の事例が急速に増加している。しかしながらこれらの実施状況や効果等を調査・分析するための方法は十分整理されていない。特に実臨床への展開・普及に向けては診療報酬上の取り扱いが重要であるが、その前提として遠隔診療に関する有効性・安全性に関するエビデンスの蓄積が必要となる。
本シンポジウムでは平成29年度厚生労働行政推進調査 事業地域医療基盤開発推進研究事業の研究成果を中心に、国内外の先行研究から今後どのようなエビデンスの蓄積が必要かを分析し、研究班が提案し中医協総会が取り上げた「遠隔医療形態モデル」および各事例の分類状況について報告する。

方法
学術論文の検索方法は、英文はpubmed, 和文は医中誌webを用い、検索語はMeSHを基に英:”telemedicine”、日:”遠隔診療”とした。出版時期は最新5年以内とし、英文雑誌はCore Clinical Journalsに属する学術誌に限定した。論文種別はエビデンスレベルの高いClinical Trial 、RCT、Systematic Review・meta-analysis、観察研究を対象とし、論文のTitle/Abstractを基に対象疾患および治療法を大別した。

結果
英文ではClinical Trial21件、RCT20件、Systematic Reviewおよびmeta-analysis13件、観察研究5件が該当した。
英文、和文ともに循環器系疾患や呼吸器疾患は慢性期疾患に関する文献が多く、脳・神経系疾患、外傷・救急系は急性期疾患に関する文献が多かった。精神系は、認知症、PTSD、神経心理検査、うつ病、認知行動療法、アルコール依存症、自閉症等幅広い疾患を対象に遠隔診療研究の実績が存在した。また、英文では、疾病予防・重症化予防として肥満予防や性感染症予防のほか、服薬指導や薬物中絶で遠隔診療が用いられる研究事例も見られた。

課題
診療評価として候補に挙がっているにもかかわらずエビデンスレベルの高いRCT研究が難しい領域があることから、検索方法を工夫するとともに、実臨床において診療ニーズが高い可能性のある診療行為を基に評価を行う等の方法を検討する。