[4-D-2-OP27-4] 咬合支持と隣接面接触情報の確率的勾配情報を基にした歯の経時的欠損シミュレーション
咀嚼機能の維持には歯の喪失を防ぐことがもっとも重要である。歯の喪失を咬合支持と隣接面接触の有無から評価し、加齢による歯の喪失パターンの相違を実データを用いて確率的に推測する手法を開発した。大阪大学老年学研究会による健康長寿研究の約2千人の横断データを用いた。歯の喪失を決定する方法として、1)縦に上顎歯列、横に対合歯である下顎歯列とし、2)咬合支持と隣接歯接触の有無を入力した16×16のバンド幅3の疎行列Dを構築し、3)それぞれの年代について累計値と総和を算出することにより確率質量分布を求め、4)その分布の勾配を求めることによる歯の喪失傾向を導出した。最初に抜歯される歯の部位をシミュレーターに与えることで、その後の歯の喪失部位の傾向を示すことが出来た。横断的データのみから時系列的な歯の喪失遷移様式を推定することは不可能である。本シミュレーターでは被験者群の欠損歯情報からシミュレータ上の欠損歯部位を含む歯列群を抽出し、D行列の勾配から尤も次に欠損歯となる部位を算出することで、喪失遷移を実現した。これを臨床応用することで歯の喪失に対して有効な治療介入が可能となる。今後、縦断的データを用いてシミュレータ内部の重み係数を最適化することにより精度向上を目指す。