Japan Association for Medical Informatics

[4-F-1-OP26-2] データマイニング技術を用いた電子カルテからのインシデント検出の試み

五家 花梨1, 岡本 和也1,2, 廣瀬 昌博3, 平木 秀輔1,2, 山本 豪志朗2, 杉山 治4, 南部 雅幸4, 黒田 知宏1,2 (1.京都大学 大学院情報学研究科, 2.京都大学医学部附属病院 医療情報企画部, 3.島根大学 医学部, 4.京都大学医学部附属病院 先制医療・生活習慣病研究センター)

一般的にインシデントは医療事故に繋がる前段階と定義されており、インシデントを把握して対応策を取ることで医療事故を未然に防ぐことができると考えられている。そのため、各病院ではインシデントの報告を義務化しているが、発生したインシデント全てが報告されるわけではないという問題があり、報告漏れのインシデントを発見する技術が求められている。そこで、本研究では、データマイニング技術を応用し、電子カルテからインシデントに関する記録を検出する手法を提案する。提案手法では、TF/IDF法を応用して電子カルテとインシデントレポートからインシデントの特徴を抽出し、その特徴を含む電子カルテを見つけることでインシデントの検出を行う。インシデントレポートは分析を目的として「転倒」「注射」などのカテゴリに分類されており、本提案手法ではインシデントの特徴を抽出するためにこのカテゴリを利用する。まず、カテゴリをTF/IDF法の処理単位とみなすことでインシデントと関連の強い単語とインシデントの各カテゴリに関連の強い単語を抽出する。続いて、電子カルテにおいてインシデントと関連の強い単語とインシデントの各カテゴリに関連の強い単語が共起するものを、各カテゴリのインシデント候補として検出する。本提案手法の妥当性を評価するために京都大学医学部附属病院の電子カルテとインシデントレポートを用いて実験を行った。評価実験では、電子カルテから抽出した各カテゴリのインシデント候補とインシデントレポートとを比較し、それぞれに紐づく患者とインシデントのカテゴリが一致する場合に同じインシデントを扱っているものとして評価した。結果として、「転倒」カテゴリのようにカテゴリに関連の強い単語がインシデントとの関連も強い傾向があるカテゴリでは、比較的電子カルテからインシデントの抽出が行いやすいことが明らかになった。