[4-F-1-OP26-6] 年代により変化する年齢別臨床検査値分布は高齢者の医療介入基準に影響を及ぼすか
序論 現在の高齢者は10~20年前より、同じ年齢でも心身ともに健康になってきていると言われており、事実なら高齢者に対する医療介入の見直しが必要である。本研究では肝機能、腎機能のスクリーニング検査項目に対して、高齢者群の年代ごとの検査値の違いが存在するか、病院情報システムのデータで評価を行った。方法 高知大学医学部病院情報システムの匿名化されたデータベースから、1990年から2015年までに来院した65歳以上の患者群を対象とした。検討する検査項目は、腎機能、肝機能に関連する14項目を用いた。抽出した患者群を年齢ごとに3群に分割し、年齢群ごとに年代を3群に分割した。年代の3群に違いが存在するかマン・ホイットニーのU検定を用いて評価した。結果 腎機能についてはCr値に関して、男女とも、年代とともにわずかに上昇する傾向が見られ、女性75歳~85歳の2000年代から2010年代での変化が最大であった(Q1:0.52,0.58;中央値:0.64,0.7;Q3:0.8,0.9)肝予備能についてはChE値に関して、1990年代、2000年代、2010年代の比較で、男性65~75歳(Q1:146,154,181;中央値:208,221,245;Q3:268,280,302),女性65歳~75歳 (Q1:172,197,225;中央値:239,263,285;Q3:301,321,340),女性75歳~85歳(Q1:158,168,182中央値:217,232,243;Q3:274,286,301)であった。考察 このように、腎機能、肝機能を反映する検査値は、年代とともに集団的分布全体が変化する場合があり、10年程度のスパンでも変わり得る。また、変化も健康な方向へ向かうだけとは限らない。従って医療介入の判断に使われる各種のガイドラインも、これらを考慮した、よりきめ細かな定期的見直しが必要と考えられる。