Japan Association for Medical Informatics

[4-I-2-OP30-6] RFIDタグを用いた院内位置情報システムの開発と実際の運用 
~全入院患者・病棟スタッフ・医療工学機器のリアルタイムな位置情報の確認が可能に~

矢嶋 知己1, 根府 尚弘1, 西森 英史1, 秦 史壯1, 高橋 知2, 田畑 直道2, 川瀬 勉2, 伊藤 政彦2 (1.医療法人社団 札幌道都病院, 2.株式会社リコー 事業開発本部 センシングソリューションPT)

【はじめに】
高度医療の急速な普及により急性期病院の病棟業務は多岐にわたり、看護スタッフの負担は増加し続けている。また、高齢化社会がすすみ要介護高齢者の入院患者が増加している。付き添いが必要な患者さんの独歩、認知症患者さんの徘徊などにより、転倒・転落・行方不明の可能性が高まり、見守る医療スタッフの負担も増加している。そこで当院は、業務効率の向上、医療安全にも貢献するべく院内位置情報システムを、株式会社リコーと共同で開発した。 2016年6月より病院全フロアーで位置情報サービスを開始したので、その実際を報告する。
【方法】
患者用RFID(radio frequency identifier)タグは当院全ベッド数198個を準備。入院時に患者さんに時計用バンドなどで装着。電子カルテシステムと患者氏名、入退院情報、病棟移動、ベッド移動などの情報を連携し自動的に更新している。
スタッフ用RFIDタグは、看護師、介護士、薬剤師、臨床工学技士で総数193個。ネームプレートケースを改良し装着した。
医療機器用RFIDタグは総数で71個。シリンジポンプ、輸液ポンプ、人工呼吸器、生体情報モニターなどに装着した。
RFIDタグから電波を受信するアンテナは、院内の全フロアーの病室、トイレ、廊下などの天井に260個設置。ゲートウェイは26個、廊下の天井に設置した。
リアルタイム表示および検索は、各ナースステーション大画面モニターなどのPC端末とiPADで行っている。
【結果】
1. 24時間・365日安定した運用が可能であった。
2. スタッフアンケートの結果、利用頻度は1日6回以上の利用が31.1%、1日3-5回利用が50.6%と高いものであった。位置情報利用後は、「探す時間が減った」が64.8%、「探す手間が減った」が54.5%、「探す距離が減った」が37.5%と効果を実感していた。
【結語】
患者・スタッフ・医療機器の位置情報をリアルタイムに確認できることで業務の大幅な改善が可能となった。患者位置を把握し行動を予知することで医療安全にも貢献している。