Japan Association for Medical Informatics

[4-L-1-PP15-4] MID-NETを用いた薬剤副作用の検索精度に関する検討

井上 隆輔1, 大友 千晶1, 中山 雅晴1,2 (1.東北大学病院メディカルITセンター, 2.東北大学大学院医学系研究科医学情報学分野)

【目的】医療情報データベース基盤事業において、東北大学病院に導入された医療情報データベース(以下MID-NET)を用いて、有害事象の発現リスクを評価すべく、必要な医薬品の処方および疾患の発生等を抽出するための条件を検討した。

【方法】薬剤投与後に有害事象を発現した症例を抽出するための条件を設定した。①スタチン/フィブラート系薬剤処方後の横紋筋融解症の発現リスクの評価、②抗菌薬注射後の肝機能障害の発現リスクの評価をテーマとした。
①はスタチンまたはフィブラート処方後に新規に横紋筋融解症の病名が付けられた例、またはクレアチンキナーゼ(CK)の上昇(CK2000U/L以上)がある例を対象とした。
②は、カルバペネム系抗菌薬の注射後に新規に肝機能障害の病名が付けられた例、またはAST・ALTの上昇(AST190U/L以上またはALT215U/L以上)がある例を対象とした。
いずれも2014年3月の1か月間を対象とし、薬剤投与前に該当病名が付けられている例は除外した。

【結果】いずれのテーマでも条件を満たす例が過不足なく抽出されたが、同時に偽陽性が認められた。
①により2098例が抽出され、うち3例でCKの上昇が認められた。しかし、3例とも心臓・大動脈手術後に一過性に上昇した例であった。そこで抽出条件に心臓や大動脈の手術を除外する条件を加えると、正確な抽出結果が得られた。
②により、109例が抽出され、うち12例で肝機能障害が認められた。しかし、10例が偽陽性であった。このうち3例は肝機能障害の既往があるが、2014年2月以前に肝機能障害の病名が付けられていた例、1例は膵臓手術後に一過性に肝機能異常を呈した例であった。そこで過去病名の検索期間を延長し、肝胆膵系の手術を除外する条件を加えたところ、これら4例は検抽出象外となった。他の6例は肝炎や転移性肝腫瘍などの既往があるが、病名としての肝機能障害は付けられていない例(4例)、小腸手術後に一過性に肝機能異常を呈した例(1例)、他の薬剤による肝機能障害が疑われた例(1例)であり、適切な除外条件の設定により抽出対象外とできると考えられた。

【結論】抽出対象外とすべき病名、手術などを適切に設定し、またそれらを除外する適切な期間を設定することにより、偽陽性を減らせると考えられた。