Japan Association for Medical Informatics

[2-D-2-2] 宅歯科医療現場における医療介護連携ICTの実際と諸問題

外山 敦史 (外山歯科医院)

 現在愛知県では、医療介護連携のためのICTの整備が進んでおり、登録医療機関も増加している。当院が所在する地区歯科医師会においても加入率増加が報告されている。しかし、実際に歯科で活用している事例はほとんど聞かれない。当院も自治体のICTネットワークへ参加し、訪問歯科診療における活用を検討したが、いくつかの問題があり、運用に至っていない。今回その問題点を報告する。
 1つ目の問題点は、自治体ごとにネットワークが構築され、それぞれのIDとパスワードが必要なことである。当院の在宅患者は近隣市町村も多く、患者の在住地域に合わせてログインしなおすのでは、ICTの利点の1つである情報のリアルタイム性が得られない。2つ目の問題としては、導入当初、Wi-Fi環境下でなくては利用できず、移動しながらの情報閲覧には、独自に移動通信環境を用意する必要があったことである。当院は複数のチームで訪問を行っているが、快適な利用にはチームごとにモバイルWi-Fi等を用意する必要があり、コスト的に問題があると考えられた。さらに、在宅歯科医療で最も欲しい情報は、直近の全身状態や投薬の情報であるが、当地域のICTは医学情報のデータベース機能は有しておらず、画像添付でしかやり取りができない。このため、現状では、主治医に画像情報の送信依頼が必要であり、即時性が期待されるICTのメリットを感じられなかった。
 医療介護連携のICTは、連携に関わるすべてのユーザーへの配慮が必要であり、電話やFAXを超える利点や利便性がなければ、積極的な活用には至らないと思われる。今後、現場のユーザーの要望を配慮した改善が行われることを期待したい。