Japan Association for Medical Informatics

[2-E-1-1] 電子カルテ記載量予測モデル創出を目指した電子カルテ年間記載文字数の分析

藤田 健一郎1, 杉山 治1, 平木 秀輔1, 岡本 和也1, 竹村 匡正2, 黒田 知宏1 (1.京都大学医学部附属病院, 2.兵庫県立大学大学院応用情報科学研究科)

情報システムを設計するに当たり、データ量の見積はその基礎となるものである。電子カルテから地域医療連携基盤、そして全国規模の医療基盤へと医療情報システムの規模が拡大していく中で、電子カルテのデータ量を予測することは、単に必要なストレージを見積もるために必要なだけではなく、表示領域のサイズやデザイン、データの読み込み速度など、電子カルテアプリケーションのUser Experience(UX)における前提条件として本来不可欠なものである。そのためには、電子カルテ記載量の予測モデルを構築する必要があると考えられる。そこで、本研究では、予測モデルを創出するための予備的な調査として、電子カルテの記載文字数に関する分析を行った。具体的には、ある大学病院の電子カルテについて、2006年~2016年の11年間における患者毎の年間記載文字数を、外来、入院及び全体のそれぞれについて計測した。その結果、患者毎の電子カルテ年間記載文字数は、外来、入院及び全体のいずれにおいても概ね対数正規分布に従うことが明らかになった。また、記載文字数は継続的に増加していることも明らかになった。次に、予測モデルにおける説明変数の候補として、患者毎の、年間外来受診日数、年間入院日数及び前年の記載文字数について、電子カルテ年間記載文字数との相関関係を検討した。その結果、或る程度の相関はあるものの、いずれも説明変数としては不十分であった。本研究の結果、非常に記載量の多いカルテが存在すること、記載量そのものが増加していることが明らかになった。これらは、電子カルテアプリケーションが取り扱うべきデータ量の前提条件としては重要なものと考えられる。今後は、計測を年単位ではなくより短い月単位、日単位又は入院単位等にした分析を試み、予測モデルの検討を行う。