一般社団法人 日本医療情報学会

[2-F-1-5] 電子カルテと連携する音声認識システムに関するニーズ調査

野田 和敬1, 生坂 政臣1, 傳 康晴2, 鈴木 隆弘1, 大平 善之3, 上原 孝紀1, 島井 健一郎1 (1.千葉大学医学部附属病院, 2.千葉大学文学部, 3.国際医療福祉大学)

目的:診療業務の効率化は限られた医療資源への負荷を軽減する上で重要であり,それを達成するひとつの手段として,電子カルテと連携する音声認識技術の活用が期待されている。そのためにはまず,音声認識技術に対する現場のニーズを把握することが重要と考えられた。本研究では,医師・コメディカルを対象としたアンケート調査を実施し,音声認識システムに対するニーズの高い領域・診療場面を明らかにすることとした。方法:全国特定機能病院に勤務する医師・コメディカルを対象として,郵送法により調査の通知と回答依頼を行い,回答はすべてインターネット経由で収集した。結果:回答者数は649名,回収率は20.6%であった。回答者の内訳は,医師(または歯科医師)463名(71.3%),看護師30名(4.6%),薬剤師36名(5.5%),臨床検査技師7名(1.1%),理学療法士37名(5.7%),作業療法士35名(5.4%),言語聴覚士23名(3.5%),診療放射線技師16名(2.5%),その他(医療事務)2名(0.3%)であった。ニーズが高かった用途を列挙すると,「電子カルテの特定の項目を呼び出す」,「救急対応時の処置等を記録する」,「カンファレンス等の会議録をテキスト化する」,「薬剤の添付文書を参照する」,「処置中にCT画像などの閲覧操作をする」,「患者への病状説明をそのままテキスト化する」,「診療情報提供書や入院診療計画書などの医療文書を作成する」などであった。考察:『文章の記載』が従来想定されてきたニーズであったが,本結果では『音声でのカルテ操作』と『会話の記録』が音声認識技術へのニーズとして高い傾向にあった。なお,本研究は厚生労働科学研究費補助金を受けて実施した。